2015/05/23

【東京五輪2020】国際スポーツ大会の「おもてなし術」、オーストラリアから学ぶ

豪州大使館が、東京・三田の同大使館で開いた「メジャースポーツイベントセミナー」。東京都、ゼネコン、民間企業などから70人近い出席者が参加した。このセミナーの目的は、2020年東京五輪を始めとして、前後3年間で開かれる4つの世界大会について、豪州のノウハウを提案するというものだ。ノウハウは、五輪自体のコンサルティングや、開閉会式のイベントプロデュース、膨大なスタッフ・ボランティアの教育方法、競技場同士の施設計画など多岐にわたる。前回開催から56年、再び日本が世界中から訪れる人々に向けたホスピタリティーが問われている。

◆ライブサイトの展開

 日本では、19年にラグビーワールドカップ、20年に東京オリンピック・パラリンピック、21年には関西でワールドマスターズゲームの開催が決まっており、3年間で世界的な大会が4つも開かれる。東京五輪では延べ来場者数1000万人ともいわれており、東京都区部人口に近い人々を迎えなくてはならない。
 セミナーで講演したCox Architecture社のラッセル・リーディレクターは、「五輪では“ライブサイト”という考え方が必要だ」と強調する。「ライブサイトは、競技場の外でモニターで観戦しながら集まって飲食できるようなスペースのこと。こうした場所があれば、入場券を買えなかった人々も五輪を楽しめる」という。

ロンドン五輪会場に設けられたライブサイト(提供:Cox)
12年ロンドン五輪では、多くのライブサイトが用意された。08年北京五輪では、セキュリティーが厳しく、メーン会場の近くでも、集まって盛り上がれる場所が少なかったという。
 東京五輪では、ほとんどの会場が8㎞圏内に集中しており、複数の会場間をつなぐような形で、ライブサイトを展開させることがかぎになるようだ。

◆レガシーと仮設施設

 五輪コンサルタントのMiアソシエーツ社は、大会計画の簡素化や施設計画の見直し、コスト削減を含む効率化についてレクチャーした。同社は世界最大のスポーツイベント、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップのブラジル大会でもコンサルタントを行っており、それらの経験から、正確な予算立ての必要性や、各施設に明確な役割と責任を与えることが重要だと指摘する。競技施設は、組織委員会が大会のために必要だとする要求と、施設オーナーが永続的施設とする要求にギャップが生まれるため、本設部分と仮設部分の組み合わせ方を議論しなければならないという。

◆イベントとしての開会式

 イベントプロデュースのデイビッド・アトキンス・エンタープライズ社は、00年シドニー五輪の開閉会式を皮切りに、10年のバンクーバー冬季五輪の開閉会式や表彰式などもプロデュースした。
 シドニーでは、実に1万5000人、06年のドーハアジア大会で8000人を超えるキャスト・パフォーマーを展開した。バンクーバーでは、エミー賞も受賞している。
 五輪の開会式は、会場360度すべてを意識した演出や、多数のパフォーマーの訓練なども必要となる。本格的なショー文化が浸透していない日本では、こうした点も考慮する必要があると説く。

◆スタッフの研修

 五輪では、多くのオペレーションスタッフやボランティアが大会にかかわる。数万人にも達するスタッフの教育・研修もまた、課題の1つだ。豪州最大の政府職業訓練専門教育機関Technical and Further Educationは、シドニー、アテネ、ロンドンなどで研修プログラムを提供した。
 スタッフすべてが未経験のなかで、だれがリーダーシップをとり、時間とストレス管理を行い、コーチングするのかといった問題や、ボランティアの入場管理や会場整理、コミュニケーション、訓練場所の提供などが課題になるという。

◆建設マネジメント

 レンドリース・グループが提起するのは、「ホワイト・エレファント」についてだ。日本語にすると、無用の長物という意味になるが、大会終了後に転用しなければならない施設を、建設前から考えておくことの重要性を強調する。
 同社はロンドン五輪で、選手村の住宅を、当初1戸当たり70㎡で計画されていたものを100㎡に広くし、大会後に販売しやすくプラン変更した。
 彼らが提示する東京五輪の課題は、いま取り組みが始まった日本にとって、考えなくてはならない重要なものだ。ロンドンや北京での事例を参考に、ぜひとも悔いのない大会を開催してもらいたい。
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