2016/07/03

【小松精練ら】浮島式水質浄化システムが食糧問題も解決!? 産官学連携の発泡セラミックス活用技術


 染色工場の廃棄物から作った発泡セラミックスを使って湖沼などの水質を浄化し、富栄養化源を吸着したセラミックスをさらに土壌改良材として2次利用する水循環システムのモデル構築に向けた取り組みが始まっている。石川県小松市や金沢大学のほか、トーケン(本社・石川県)、小松精練など、地域の産官学が連携して進めているプロジェクトで、同市にある木場潟に水質浄化装置を設置し、約1年間かけて装置の構造や植生の変化などを検証する実証実験が6月からスタートした=写真。

 木場潟はかつて湖沼としての水質が全国ワースト2になるなど、水質の浄化が緊急課題となっていた。2013年には市と小松精練、トーケンが先行してプロジェクトを立ちあげ、潟で小規模ながら浄化実験も実施。翌14年に大学、企業、市民団体、行政で構成する木場潟浮島プロジェクト推進委員会(委員長・長野勇小松短大学長)が正式に発足し、発泡セラミックスを活用した浮島式水質浄化システムの開発に着手した。「浮島設計・再生エネルギー」「水質浄化・農業活用」「生態保全・環境教育」の3グループに分かれて基礎データの収集や設計を進め、今年度から実証実験に入った。
 システムの枢軸機能を果たすのは、小松精練が開発した超微多孔セラミックス「グリーンビズ」。自社の染色工場から排出される余剰バイオマスケイクを高温で焼成することによって微多孔化した発泡セラミックスで、その吸水性や透水性などを生かした緑化基盤材やインターロッキング材としてこれまで多くの実績がある。

植生ユニット

 システムは、木製枠で製作した浮島(1.5m四方)にネットに詰めたグリーンビズを吊り下げ、水中の窒素やリンなどの富栄養化源を吸着させる。浮島にはセリやクレソンなどの在来植物を使った植生も施す。グリーンビズは1ユニット当たり40㎏係留し、定期的に交換する。この「植生ユニット」のほかに、ポンプで水を循環させて浄化効率を上げるため、ソーラーパネルとエアーポンプを組み込んだ浮島「発電ユニット」も配置する。

発電ユニット

 6月に開始した実験では植生ユニット8基と発電ユニット2基を設置。これまでの実験で吸着性能は確認しているため、今回は浮島の構造や植生の変化、生態系の状態などを検証する。
 プロジェクトの特徴は、水質浄化効果を高める水循環システムのモデル化(汎用化)と、浄化に使った発泡セラミックスの土壌改良材としての2次利用を見据えていることだ。小松市エコロジー推進課では「地元企業が中心となって開発した水質浄化システムが国内外に発信されることを期待している。小中学校での環境教材としても生かしていきたい」と期待する。
 小松精練などでは今後、浮島式水質浄化システムの改良点なども探り、公園やゴルフ場の池など多用途に利用できる規格品化を見据えながらマーケティングを行っていく考えだ。さらに同システムの大きな特徴である、土壌改良材として農芸分野への2次利用展開も注目される。関東圏では近年、「水はけがよく、水持ちも良い」としてグリーンビズに対する土壌改良材としての需要が急増しており、これに栄養素であるリン、窒素などの付加価値をつけることでいっそうの需要が見込まれるからだ。
 小松精練の中山賢一会長は「海外からの輸入に頼っているリンを含んだ土壌改良材を自前で供給できれば、農業振興にも寄与できるのではないか。廃棄物のリサイクル循環で、水質を浄化し、さらに“食”にも貢献していく。そんな水循環モデルを構築していきたい」と語る。発泡セラミックスの水質浄化機能を効果的に生かしたモデルを、将来的には水資源不足問題に対するソリューションとしても提案していきたい考えだ。
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