2016/07/03

【E&E会議inプラハ】環境配慮時代の切り札「中温化技術」は普及に課題<4>


 会議最終日の3日目には、アスファルト混合物の中温化技術など4つのセッションが開かれ、計25編の論文が発表された。日本調査団もようやく現地の環境に慣れ始め、会場への“地下鉄通勤”も板についてきただけに、名残惜しさを口にする団員もいた。写真はクロージングセッション。中温化技術の優位性が評価された

 中温化技術は、アスファルトの粘度を一時的に低下させる特殊添加剤の効果などにより、通常のアスファルト混合物の製造温度(160-180度程度)を30度程度低減させることができる。
 製造温度を低減させることで、加熱に必要な重油などの消費量やCO2の排出量抑制に貢献する。また、温度を下げることで熱や蒸気(アスファルトヒューム)の発生を抑え、現場の労働環境を改善できるといったメリットもある。混合物の施工温度を低減しても、通常の混合物と同等の品質を確保するため、寒冷期の施工性の改善にも効果を発揮する。
 セッションでは、中温化アスファルト混合物の室内試験結果や製造設備、温暖化ガス抑制の効果などについて論文が発表された。
 再生材を混入した中温化混合物の試験施工結果なども発表され、リサイクルと中温化技術のコラボレーションによる環境にやさしい道路舗装にも高い関心が寄せられていた。
 低炭素社会に貢献する中温化混合物は世界中で注目を集めており、環境面への配慮から欧米での製造量はおおむね増加傾向にある。特に米国では、アスファルトヒュームによる健康面への影響に対する意識が高く、製造量が大幅に増加している。
 日本でも2010年2月に中温化アスファルト混合物がグリーン購入法に基づく特定調達品目に追加され、道路舗装各社が多くの中温化技術を開発している。既に、最大50度の温度低減が可能な中温化剤を開発している社もある。
 とはいえ、道路舗装分野での環境意識の高まりと同調するように、普及が順調に拡大しているとは言い難い状況だ。ある団員に聞くと「普及状況は芳しくない」という。
 普及が進まない原因の1つはコストだ。ケミカル系が主流の特殊添加剤と製造段階での手間などから、合材単価が高くついてしまう。コストアップを抑えるため、フォームドアスファルトを使って製造温度を低減する方法もあるが、専用装置の購入と既存のプラント設備への取り付け費用を合わせると数千万円の初期投資が必要になる。
 さらなる普及拡大を見越し、専用装置を設置した道路舗装会社の中には、需要の低調な推移を受け、十分に活用しきれていない社もあるという。
 利用量が多い再生混合物が、グリーン購入法に基づく特定調達品目の対象外になっていることも普及にブレーキをかけている。新規混合物だけでなく、再生混合物の特定調達品目への追加が、今後の普及拡大のかぎを握っている。

日本調査団は最終日まで精力的に会場を回った

 日本調査団の1人は「アスファルトヒュームが健康面に与える影響が重要視されていない」ことも普及が進まない要因の1つとして指摘する。
 再生混合物の特定調達品目への追加や健康面への影響については、16年度に関係機関での検討が本格化する見通し。より幅広い混合物が特定調達品目の対象となり、健康面での意識がさらに高まれば、日本でも中温化混合物の需要が急拡大するかもしれない。
 中温化混合物は、クロージングセッションの総括でも、「まだ開発段階にあるものの、多くの優位性がある」と高い評価を受けていた。
 使用に対するインセンティブ制度を導入している国もあり、環境配慮時代の切り札としてさらなる活用促進が世界的な流れになりそうだ。
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