2015/06/13

【技術裏表】けが発生率を半減! 東芝エレベータが緩衝素材付きエスカレーター踏み段を開発

東芝エレベータは、先端部に樹脂製の緩衝素材を取り付け安全性を高めたエスカレーター踏み段をリニューアル案件向けに開発した。従来の踏み板に比べ、けがの発生確率を50%軽減すると試算。高齢者や子どもの転倒・転落事故が多い中、バリアフリー化への需要にも対応する。商業施設のほか、交通バリアフリー法の施行で駅や空港でのエスカレーター設置も進んでおり、現在は7000台ほどが対象になるという。エスカレーターはインバーター制御への改修の需要があり、そうした機会をとらえて設置を提案していく。

 エスカレーターでの救急事故は、9割以上が利用時の転倒・転落によるものといわれている。高齢化社会が進む中で高齢者の事故も目立ち、社会インフラとして必要不可欠になったエスカレーターの安全性向上のニーズは高まりつつある。
 こうした要請を受け、同社では新築案件で設置を始めた緩衝素材付き踏み段を、既設エスカレーターでも適用できるようにした。従来は鉄製の踏み段があるのみだったが、段の先端部に緩衝素材を取り付けた踏み段を販売することになった。素材は同社が独自で材料を配合し、踏み段先端部に高さ0.5mの位置からガラスコップを落とす実験でも割れることはなかったという。また、利用者の頭部が先端部に衝突した場合を想定し、自動車業界などで使われる落下試験によりリスクの可能性を調べたところ、頭部損傷の発生確率が従来型より50%低減できた。ただ、柔らかすぎれば踏み段の溝にハイヒールや傘などが挟まる危険も高まるため、緩衝効果と変形しにくさのバランスを考えて素材を開発している。
 設置は緩衝素材だけを取り替えるのではなく、素材が設置されている踏み段全体を更新する。建物の1-2階分の高さを昇降する4.5mのエスカレーターでは踏み段は60個あり、そのすべてを取り替えることになる。作業日数は、この高さの場合で2日ほど。費用は600万円ほどを見込んでいる。
 同社では、エスカレーターをインバーター制御にリニューアルするケースが多いことから、その際に踏み段の取り替えも提案し、受注につなげる考えだ。インバーター制御は、利用状況に応じた速度変化ができるなど省エネ効果が高いだけでなく、緊急時に急停止せざるを得ない際も緩やかに停止させるなど、安全性の向上にも効果を発揮する。商業施設や鉄道駅、空港などでエスカレーターは不可欠な動線となっており、バリアフリー化への要請は高いことから、提案を強化する。設置に合わせ、エスカレーターの役割や安全な乗り方への理解も周知したい考えだ。
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