2015/06/28

【現場最前線】コンクリ養生に新技術! 熊谷組の田尻地区函渠その5工事

熊谷組は、東京外かく環状道路千葉県区間のうち「田尻地区函渠その5工事」(千葉県市川市)の施工を進めている。大規模な開削工法が見どころで、地下に降りると大空間が広がるダイナミックな現場でもある=写真。この現場を束ねる町田憲泰作業所長は、これまで3環状(圏央道、外環、中央環状)の施工に長く携わってきた。酸いも甘いも噛み分けてきた道路工事のプロは、どのように現場と向き合っているのか。

 この工事は国土交通省関東地方整備局首都国道事務所が発注し、国道298号と市道7094号を切り回しながら、開削工法で函渠40mと掘割スリット150mの計190mを整備する。掘割スリット部にはポンプ室20mの施工が含まれる。連続地中壁の構築では、排泥を削減するECO-MW工法のほか、深さ54.5mに達するポンプ室部分にはTRD工法を採用した。
 TRD工法は、刃先が非常に長いチェーンソー型の「カッターポスト」で地盤を掘削していく工法で、セメントミルクを吐出しながらソイルセメント壁を構築する。特殊な工法で施工難易度が高く、さらにこの現場では地下20mから硬い地盤が出てくる。しかし、「信頼性の高い専門工事業者を確保できた」(町田所長)ことで、無事に乗り切ることができた。
 町田所長には、「現場として新技術の開発・普及に貢献したい」という思いがある。その思いが強く表れているのが、コンクリートの品質管理だ。品質向上と新技術の普及という一挙両得を狙う。
 壁面のコンクリート養生には、熊谷組が開発した「水・空気併用のパイプクーリング工法」を採用した。水か空気のどちらかを使う従来型のパイプクーリングを改良し、文字どおり水と空気の両方を使う。空気によるパイプクーリングをベースとしながら微量の水を送風管内に注入する仕組みで、空気のみに比べて冷却効果が高く、水のみに比べ設備が簡便で済む。

特殊な養生シートを一部に採用
一方、メーカーが新開発した特殊な養生シートも現場内の一部で採用している。灌水(かんすい)養生に近い効果が期待できるシートで、湿潤状態を目視確認できるのが特徴だ。

現場内の青色LED照明
首都圏大型土木の“目玉現場”だけに、見学者も多く訪れる。この現場のイメージカラーは、熊谷組のコーポレートカラーでもある青を採用。青色のカラーコーンを始め、青色LED(発光ダイオード)照明なども現場内の至る所に設置している。現場を見れば一目で熊谷組工区だと判別でき、隣接工区との差別化にも一役買っている。

地上部
現場はマンションや住宅が近接しているため、騒音・振動対策には非常に気を遣う。防音マットなどの使用はもちろん、「近隣への配慮を明記した“十訓”を毎日の朝礼で唱和し、作業員一人ひとりに注意と自覚を促している」
 これからの時期、現場では熱中症対策に力を入れている。事実、「これまで熱中症は1人も出していない」という。経口保水液を全員に配布して定時的な水分摂取を呼び掛けているほか、一部の作業員向けにファンを内蔵した空調服を30着準備している。一方、新たな取り組みとして、現場内を巡回して作業員の健康状態などをチェックする専任者も配置している。町田所長の「無事故・無災害で竣工を迎えたい」との意気込みは、こうした取り組みにも表れている。
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