2016/02/26

【記者座談会】東日本大震災からまもなく5年 災害時、復興後の建設業界のあり方考える時期に


A 東日本大震災から来月で5年の節目を迎え、2016年度からは復興・創生期間がスタートする。まずは復興庁の役割から。
※写真は市街地のかさ上げなど復興まちづくりが進む宮城県南三陸町

B 進捗管理がメーンとなる。着実に復興が進む宮城や岩手とは対照的に、福島の復興はまだまだこれからの段階だ。被災3県のそれぞれで異なる現状に、被災地と国、あるいは省庁間の調整といった“橋渡し役”としての機能が求められる。住宅再建やインフラの整備を進めるだけでなく、被災地の産業復興や観光振興など地域経済の発展をどう支えていくのかが今後の大きなポイントになる。それを実現していくことが「新しい東北」の創造と言えるのではないか。
C 福島復興の大前提となるのが、除染とそれに伴う汚染土を運び入れる中間貯蔵施設の整備だ。環境省は、中間貯蔵の本体施設に10月ごろから着工すると表明した。当たり前だけど、全体面積のいまだ1%弱に過ぎない用地の取得が事業進展のかぎだ。
A 業界側はこれまでの対応をどのように考えているだろうか。
D 建設コンサルタントは、震災がれきの撤去や防災集団移転促進事業、災害公営住宅の整備に向けた調査・測量、設計、まちづくりマスタープラン作成などに携わった。現在はそれも終了し、工事監理の段階に入っている企業が多い。いまは、「ハードは整備されてもそこに住む人が戻らなければ、地域の再生につながらない」という指摘をよく聞く。雇用の場を創出して、観光振興など地域ににぎわいと生業(なりわい)を取り戻すことが重要と口をそろえて強調しているね。
A ゼネコンはどうかな。
E 日本建設業連合会の中村満義会長は、発災後の活動を振り返る際に、当時の国土交通省東北地方整備局長だった徳山日出男事務次官から「まさに戦友」と言われたことをいつも紹介する。東北地方の建設業者も、「戦友」と言われたことをいまでもよく口にする。発注者が、社員や協力会社の大変さを思いやってくれていることに、業界は非常に感謝している。
F 福島県建設業協会の小野利廣会長が県の建設業審議会で「災害時の活動を建設業界に期待するならば、最低でも何社が地域に必要かといったことを考えなければならない」と指摘していた。災害時のためだけでは、建設会社は存続できない。そろそろ震災時の業界の活動を振り返り、それを正当に評価した上で、復興後の地域の業界の姿を、受発注者が手を取り合って考えなければならない時期かもしれない。
A 最近、東北の被災地を取材して感じたことは。
G 復興の進捗に対する印象は立場によって異なる。発注者は「計画どおりに進んでいる」と言うが、被災住民からは「まだまだ…」という声が多く聞こえてきた。明らかに復興は進んでいるものの、それを被災住民が実感できるレベルまで至っていないということだろう。
H 一からまちをつくり直すため、区画整理の進捗に応じて仮設道路が目まぐるしく変わり、生活に不便を感じている人も少なくない。復興という目標を達成するためには不可避なプロセスは多くあって、さまざまな人たちがそれぞれの立場で苦労を強いられる場面があるのはしょうがないが、何らかのフォローは必要だ。
G 被災地では、復興後の将来を見据えたまちづくりが進められている。基幹産業である水産業の活性化や観光振興策による交流人口の増加などを打ち出しているが、人口減少を食い止める決定打がないのも実情だ。
A この問題は、他の地方にも当てはまる。容易ではないが、被災地にはモデルになるような成功例を願っている。
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