国立研究開発法人の海上技術安全研究所(海技研、茂里一紘理事長)は15日、伊豆大島南方の海底熱水地帯「大室ダシ」(水深200-2000m)で、小型のホバリング型自律水中ロボット(ほばりん)による全自動海底調査試験に成功したと発表した。海技研では今回の小型水中ロボの試験成功と 水中ロボが民間への貸し出しも可能なことから、「政府が期待をかけ海洋資源の技術開発の1つとして挙がっている、海底熱水鉱床など海底鉱物資源調査の加速が期待できる」(田村兼吉研究企画調整主幹)としている。画像は海技研HPの動画より。
海底資源探査技術は、政府が2013年に新たな海洋基本計画で、メタンハイドレードや海底熱水鉱床などの海洋資源の商業化についての方向性が示されたことを受け、「府省横断による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」で、次世代の海洋資源調査技術の課題として位置付けられた。今回の小型水中ロボはSIPで示された11課題の1つ、次世代海洋資源探査技術(海のジパング計画)の一環として開発が進められてきたもの。16年度半ばには、新たな自律型無人探査機も投入する予定。
今回の「ほばりん」は、長さ1.2m、幅0.7m、高さ0.7mの小型ながら、海底近くをホバリングしながらコの字を描くように、ジグザグに移動し撮影と水温・塩分・濁度データなどを収集できるのが特徴。試験では、あらかじめ設定した海底から5mの高さで緯度・経度などを設定した上で、200mの側線6本を自律的に移動させながら、水深200mの熱水地帯の各種データ取得に成功した。
今後「ほばりん」は、単体試験だけでなく、他の水中ロボットとともに、海底熱水鉱床として期待される沖縄海域などの調査に投入する予定。また、現在開発中の小型航行型水中ロボットも来年度半ばには、熱水鉱床などの試験調査に使う。
国土面積の12倍を超える日本の大陸棚に眠る海洋資源については、商業化へ一歩進むメタンハイドレードを筆頭に、建設産業界でもエンジニアリング会社や大手ゼネコンなどが参画。
また、熱水鉱床や希少金属採掘の将来的な商業化を視野に、マリコンも設備投資可否の検討を進めるなど、中長期の新市場として関心が集まり始めている。
*海底熱水鉱床 海底でマグマやマグマ溜まりからの熱が海底岩盤などを通過することで、金属鉱物や希少鉱物資源に変える鉱床。海底深くの鉱床の回りは熱水で、資源量探査と採掘には新たな技術開発が必要とされていた。
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