2016/02/28

【インタビュー】中古建機オークションにITで〝場〟提供 SORABITO社・青木隆幸社長に聞く


 油圧ショベルやブルドーザーといった建機から、アタッチメント、発電機などの中古建設機械を値段付きで紹介しているウェブサイトがある。「ALLSTOCKER(オールストッカー)」と名付けられたそのサイトは、国内だけでなく、アジアを中心とした海外とを結ぶ「建設機械のオンラインマーケット」だ。昨年11月、約8カ月のベータ版期間を終えて、正式にサービス開始した。「中古建機市場が抱えていた課題を一気に解決する」という同サービスについて、運営するSORABITO社(東京都中央区)の青木隆幸社長=写真=に聞いた。

 日本語でも英語でも閲覧が可能なオールストッカーは、これまでに累計掲載台数が1万5000台を超えている。サイトには、ミニショベルから100t積みダンプまで、国内外の中古建機がラインアップされている。これだけの掲載数が集まる理由はなぜだろうか。
 「これまで、中古建機市場を取り巻く環境は、あまり良くなかった。中古建機の取り引きでは、現金と機械を相対で取り引きする商習慣などが残っており、売る側も買う側も、お互いの信用を得ることが難しかった」という。
 またマーケット自体が非常に少なく、横浜や成田など数カ所に点在するオークション会場で競りのように重機が取り引きされるケースもあるが、この場合、売る側は高額な回送費をかけて会場まで建機を持ち込み、買う側も海外からの渡航費や交通費をかけて集まっている。
 「無駄な費用がかかっているが、IT(情報技術)でこうした不便さを解消できるのではないか」と、青木氏は考えた。乗用車の中古車市場には、オークション市場が形成されているが、建機にこうした市場はまだない。「きちんとした“場”をつくることで、透明性を形づくりたかった」という。

オールストッカーのサイト

 オールストッカーの最大の特徴は、建機の売買でハードルとなる「品質」「決済」「物流」の3本の柱を、サイト内で完結できることだ。
 売り主は、同社のガイドラインに沿って、運転時間メーターやシリンダー、履帯、エンジンルームなどの写真を撮影してサイトに掲載する。今後は、統一の査定基準なども整備して、品質面の担保を確保していく予定だ。
 決済では、都市銀行の信託口座を利用したエスクローサービス(第三者による引換証決済)を、共同で開発した。この仕組みで、海外の買い手とも確実に建機と代金を受け渡しできる。
 物流に関しては、提携する物流会社が売り手まで受け取りにくる。その際に、売買に必要となる書類一式や、海外取引であれば貿易関係書類まで整えてくるため、売り手は、専門的な貿易知識や英語力がなくても、安全に取り引きできるという。
 「海外では、EC(電子商取引)が浸透しているが、まだ国内では、違和感を感じる人もいるので、今後サイトを通じて不安を取り除いていきたい」というのも目的に挙げる。
 青木氏の実家は、愛知県の地域建設業。幼少期から身の回りにたくさんの建機がある環境で育った。大学時代に経営を学び、卒業後にネットを使った建機の買い取り販売事業を手掛けるなど、起業精神も旺盛だった。
 2014年度には、経済産業省の「先端課題対応型ベンチャー事業化支援等事業」で、オールストッカーが支援案件として採択された。
 「卒論のテーマは“何か×IT×グローバル”だった。中古建機分野をこの方式で開拓し、オールストッカーがあってよかったといってもらう」のが目標だ。
 先日起こった台湾南部の地震では、多くの被害が出た。「東日本大震災で、台湾の人たちには多くの助けをいただいた。こうした災害地域には、期間限定ではあるが、手数料などを無料にしていく」取り組みも展開している。
 オールストッカーのサイトはこちら

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