2016/02/21

【書籍】モダニストはなぜ京都で設計するのか 『WARO KISHI 岸和郎の建築』


 ポストモダニズム全盛の1980年代初頭に建築家としてデビュー。歴史的建造物ひしめく京都に事務所を構えながら、モダニストとして「今日的(コンテンポラリー)な建築」を追い求めてきた。その30余年にわたる設計活動の軌跡をたどる作品集である。

 処女作である『京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)高原校舎』(1982年)から『南泉禅寺再建計画』(2016年)まで、選りすぐりの39作品を掲載。その時々の思考のプロセスを見てとることができる。
 生粋のモダニストが自らの還るべき立脚点を「京都」と思い定める契機となったのが、料亭『紫野和久傳』(1995年)だという。以来、京都で設計することの意味を問い続ける中で、日本的な美を継承しつつ、場所の特性を丁寧に読み解くことのできる建築家としての評価を獲得、その活動の場は関西から東京、海外へと広がっている。
 巻頭に自らの原点とも言える建築や空間体験をつづった「岸和郎をつくった14の出来事」と題するエッセーを収録。巻末に掲載した建築史家の高橋康夫京大名誉教授による論文は建築史の中に岸氏の活動を位置付けながら、その意義を示している。(TOTO出版・4300円+税)
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