2016/07/05

【維持管理】100年後も健全な橋に! 小名浜港の臨港道路橋に施工段階で点検マニュアル策定


 構造物を使い始める前に点検マニュアルを--。東北地方整備局小名浜港湾事務所は、福島県いわき市の小名浜港で整備を進めている臨港道路(橋梁部)について、施工段階から点検計画を立案し、点検マニュアルも策定した。「100年後も健全な橋」とするためだ。同整備局でこうした取り組みは初という。画像は完成イメージ

 点検対象は、小名浜港東港地区多目的国際物流ターミナルとして建設中の約52haの沖合人工島と3号ふ頭を結ぶ長さ927mの橋梁。形式は東港部(197m)および3号ふ頭部(220m)がともに4径間連続PC箱桁橋、航路部(510m)は5径間連続PCエクストラドーズド橋となる。臨港道路にPCエクストラドーズド形式が採用されるのは国内で初めて。
 設計段階でさまざまな塩害対策、耐久性に配慮した材料選定・構造寸法の設定を行った。特に航路部は塩害対策として鉄筋かぶり確保のほか、全長にわたってエポキシ樹脂塗装鉄筋を使用するとともに、斜材は多重防食を施している。
 また、臨港道路としては特殊な形式の橋梁となるため、同事務所は維持管理面でも独自のマニュアルが必要と判断。そこで、完成した橋の管理者となる福島県や物流・荷役企業などの利用者、学識経験者、建設コンサルタント会社などでつくる「小名浜港東港地区臨港道路維持管理技術検討委員会」を設置し、点検マニュアルを検討してきた。
 マニュアルのコンセプトとして、▽専門家でなくても使える▽点検しやすい環境を整える▽現場で気づく工夫をする--の3項目を設定した。

斜材における目視評価基準

 このうち、「専門家でなくても使える」では部材応力の余裕が小さい個所や、部材の変状が生じやすい個所をマニュアルに整理。点検実施者の目視による劣化度判断のばらつきを軽減するために部材ごとに目視評価における基準を作成した。さらに点検確認の抜けや漏れの防止、異常時における迅速な対応を目的として、点検ルートマップをつくった。

箱桁内部に設置する簡易照明

 「点検しやすい環境を整える」では、例えば箱桁内部の簡易照明の設置を検討。箱桁内は立ち入り回数の少なさから照明を設置した事例はほとんどないが、桁内のPCケーブル定着部の目視確認が重要なため設ける方針だ。また、近接目視を最小限に抑えるため、一般定期点検の目視点検方法は航路直上80m区間以外は遠望目視を基本としつつ、桁下の利用状況や変状の有無に応じて近接目視を実施することとした。
 「現場で気付く工夫をする」では、点検補助の整備として、確認された変状位置特定のための補助設備や定期的に実施する計測個所の設標のほか、設計・施工上における留意個所を点検時に把握できるようにマーキングの設置計画を立案した。
 既存の点検マニュアルは、老朽化して損傷が既に発生している構造物に対応する内容となっているが、今回、同事務所がまとめたマニュアルは維持管理開始前に、供用後に起こり得るリスクなどを盛り込み、管理者の目線で効率かつ合理的に点検しようというものだ。内容は東北整備局が6月中旬に開いた管内業務発表会で報告され、最優秀賞に選ばれた。
 こうした取り組みは本格的な維持管理時代に突入しつつある中、好事例として広がりそうだ。
 臨港道路の橋梁は今秋にP4・P5間の上部が閉合され、2016年度内に開通する予定だ。
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