2015/07/04

【技術裏表】エネルギー、作業員ストレス、災害時の機能停止をゼロに! ダイダンが技研リニューアル

ダイダンが埼玉県三芳町にある技術研究所をリニューアルした。リニューアルの大きな特徴は、ループ配管による複数の建物への再生可能エネルギーの融通と、個々人の快適性や“明るさ感”に目を向け全体と個別とで使い分ける空調・照明の技術だ。その具体化が、消費エネルギー、作業員のストレス、災害時の機能停止の3つをゼロにしたモデルオフィス「ゼロ・キュービック」の開設であり、「パレットリニューアル」と銘打った同社独自の技術を組み合わせる提案手法になる。リニューアルがどのような効果をもたらすのか、整備を終えた技術研究所を取材した。写真は研究棟の屋上に並べた太陽光集熱器や太陽光パネル。その周囲にループ配管を配置している。

 リニューアル工事に取り組んだのは昨年7月から12月。「2013年に建設された新研究棟の研究テーマに再生可能エネルギーを取り上げてシステムの開発や設計に生かそうとしていた」と吉田一也取締役執行役員開発技術本部長がそのきっかけを語る。佐々木洋二技術研究所長も「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現には、太陽光や地中熱といった再生可能エネルギーを有効利用しなければならない。アンビエント(全体)とタスク(個別)を使い分け、エネルギー消費量を抑える必要もあった。リニューアルは、複数の建物でそうした技術が有効に使えるか検証するものでもある」と説明する。
 建屋の屋上には太陽光パネルやコージェネレーションの設備、太陽熱集熱器などが所狭しと並ぶ。従来は新研究棟だけだったこうした設備を研究棟にも並べて機能を増強、必要なエネルギーを確保できるよう計算して設けた」(田中康信技術研究所施工システム開発グループ長)。さらに、両棟をつなぐ配管をエネルギーを研究所内に融通するループ配管として改修に合わせ設置した。
 ループ配管は屋上の発電設備から研究所の階下に伸び、地下にあるジェネリンク設備や、研究棟の隣にある超臨界CO2プラントにも達する。膨大なエネルギーを使用するプラントの排熱を吸収するとともに各施設へのエネルギーを供給するヒートポンプの役目を果たしている。技術の実証が進めば、プラントなどでの実用化が期待される。

ゼロ・キュービック。照明やアクティブチルドビーム(写真左奥)も含め天井をフラットにした
一方、ゼロ・キュービックでは、室内の設備の特徴をアニメーションで紹介。同社が自ら企画立案した力作で、室内の壁に放射空調の仕組みや効果を映し出した。「画像や言葉だけでは相手に伝わらない」(田中グループ長)と、天井パネルの内部にチューブをはわせて冷暖房の熱源とし、風を生じずにムラなく室内の温度を下げる放射空調の特徴を、色彩も生かして表現している。
 ただ、体感温度には個人差があるため、全体空調と部分空調を使い分け、全体空調に放射空調を、部分空調には風を用いた空調を併用した。天井に設けた個別空調は、デスクの配置に応じて設置方向を変え、快適性を高めている。
 空調の主エネルギーは、研究所の地下100mから得る地中熱だ。「温度は18-20度と一定で、その温度で空調に活用している。通常はヒートポンプの冷水温度は7度程度にするが、冷却のためのエネルギーも抑えた」(同)と、省エネ性能も高めた。外気を導入する際には室内空調の負荷を処理できるアクティブチルドビームも採用しており、この冷却にも生かしている。
 また、照明にもアンビエントとタスクの方式を導入し、個々人の明るさ感に配慮した。全体照明にはLED(発光ダイオード)の発光板を採用、フラットな天井に合わせて照明もフラットにした。タスク照明は遠くからみるとどこで光っているか分からないように設計され、個人に必要な明かりを届ける。
 佐々木所長は「例えば天井パネルでは、当社の空調技術だけでなく、衛生や電気の技術も統合できた」と、パレットリニューアルの手法が生かせたと胸を張る。「外壁の断熱など建物自体の省エネ性能も上がってきており、再生可能エネルギーも使われやすくなる」と、同社の複数の技術を生かす余地が広がるとみている。
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