2015/07/05

【建築】「考えられるすべてを省エネ対応に」 最先端の環境配慮技術盛り込んだ「京橋MIDビル」

2月に竣工したMID都市開発(本社・大阪市、花井良一社長)の「京橋MIDビル」(東京都中央区)が、国内トップクラスのスマートオフィスとして注目を集めている。設計施工を担当した大成建設は、外付けの固定型採光ルーバーや次世代人検知センサーによる照明・空調制御など先進の環境配慮技術を惜しみなく投入し、同規模の一般的なオフィスビルに比べ46%のCO2削減率を可能にした。免震構造の採用や72時間対応の非常発電機導入などにより、入居企業のBCP(事業継続計画)にも対応する。環境性能と安全を高いレベルで両立した次世代型オフィスビルを取材した。

 ビルの規模はRC・S・SRC造地下1階地上12階建て塔屋2層延べ1万1916㎡。基準階オフィスは1フロア約770㎡で、日射遮へいを兼ねるアウトフレーム構造の採用によって3面採光の整形無柱オフィス空間を実現した。
 「採光、照明、換気など考えられるすべてを省エネ対応にした」(大成建設設計本部設備計画部環境技術開発室)というように、建設に当たっては最先端の環境配慮技術をふんだんに導入し、東京都の省エネルギー評価書制度など複数の評価・認証制度で最高ランクの評価を受けている。

◆国内初設置の「アニドリックルーバー」
 国内で初めて窓の外側に設置した特殊な断面形状の固定型採光ルーバー「アニドリックルーバー」は、ルーバー曲線の光学的特性を利用することで太陽高度に左右されず昼光を取り込み、1年を通してほぼ同じ位置で天井を照射することができる。方位や時間帯で採光量が変動していた従来のルーバーの課題を克服し、昼光センサーと連動することでさらなる省エネに貢献する。

3面採光の整形無柱オフィスは高いレイアウト効率を実現する
次世代人検知センサーを使った照明・空調制御は、人体の温度を検知してパソコンや日射の熱と人を識別することで、従来は困難だったリアルタイムの在籍状況を正確に把握し、在籍率の高低に応じて照度、空調、換気をきめ細かく制御する。

◆BCP対応で入居企業に安心・安全を提供

 BCP対応では、本線が停電した場合に予備電源に切り替える異変電所2回線受電方式を採用したほか、共用非常用発電機、約700人の3日分のトイレ洗浄水を貯留する常時受水層などを備え、入居企業に安心・安全を提供している。
 MID都市開発ビル事業部東京支社の藤井良充氏は「これだけ省エネに対するスペックが高いビルの建設は初めてだが、テナントを引き付けるためのアピールポイントになっている。社内外からの注目度も高い」と話す。
 ビルの専用部は8割を超え、一般的なオフィスに比べ共用部に割くスペースが少なくなっているが、大成建設設計本部設備設計第二部の安藤直也氏は「共用部をコンパクトに収めつつ、魅力的な空間にしている」と説明する。

緑豊かな屋上テラス
気分転換やコミュニケーションを促す空間づくりに力を入れ、多様なシーンに活用できる屋上テラスや、ダイニングをイメージさせる給湯リフレッシュコーナーなど、上質なスペースを随所に配置した。また、女性用トイレにはパウダーコーナーや小型ロッカーなど多様な機能を付加し、快適な空間をつくりあげている。
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