2016/03/11

【記者座談会】4月から「復興・創生期間」がスタート 期待される“ビルドバックベター”

A 東日本大震災からきょうで5年を迎える。4月から「復興・創生期間」という新たなステージが始まる。
B これからの5年は、まさに復興の総仕上げに位置付けられる5年間となる。いまだに仮設住宅に入居されている人がいるとはいえ、基幹的なインフラの復旧・復興は着実に進んでいると言える。
(写真提供:環境省)

C 石井啓一国土交通相も8日の閣議後会見で「この5年間に復興への確かな足取りが見られていると思っている」と語ったように、復興道路・復興支援道路は約7割で開通済み、もしくは開通見通しが公表されるなど基盤となる道路整備は目に見えて進んでいる。
D これからは住宅再建やインフラの整備を進めるだけでなく、被災地の産業復興や観光振興など地域経済の発展をどう支えていくのかが大きなポイントになる。それを実現していくことが「新しい東北」の創造と言える。
A 新しい東北の創造に代表される被災地の産業復興や生業の再生は、基幹インフラの復旧よりも道のりは険しい。
C そのとおり。被災地域の多くはもともと震災以前から人口減少や産業の空洞化といった、現在のわが国全体に通じる課題を抱える、いわば課題先進地。政府の基本姿勢としても、「まちに人が戻る」ことだけを目指すだけでなく、外から人が訪れる、あるいは移り住むような魅力あふれる地域の創造を目指す方針が示されている。それだけに政府にはこれまで以上により被災者や被災地域の視点に立ったきめ細やかな対応が求められる。
B これからの5年で被災地が本当の意味で復興を成し遂げるには被災地域の自立が焦点になるだろう。いつまでもおんぶにだっこの状態では被災地のままだ。ビルドバックベター(よりよい復興)を体現するような復興の姿を期待したい。
D それには復興・創生期間中に開催される2020年東京五輪への積極的な参画も必要だ。被災地域には東京で開かれる五輪は、まるで他人事のような意識があるだろうが、決してそうではない。五輪開催によって広がる経済効果を、地域に引き込んでくるような取り組みが求められるのではないか。五輪の開催を復興の力を変える、そんな発想が必要だと思う。それが「復興五輪」を世界にアピールすることにつながる。
A 岩手、宮城両県に比べ、福島県の復興はこれからだ。
E 復興・再生への大前提である除染は進んでいるものの、除染で出た汚染土を運び入れる中間貯蔵施設の本体施設工事は10月ごろからの着工予定だ。県内各地の仮置き場にある汚染土を施設敷地内に搬入しないことには、復興に向かっているんだとは実感がわかないと思う。
B 一方で、浜通りを中心とした地域経済復興の動きは形となって現れつつある。福島イノベーション・コースト構想の実現に向け、拠点整備の第1段階が具体化、16年度からは拠点を核とした産業集積や周辺環境整備を第2段階として進めていくことになる。
E 放射性物資を含んだ指定廃棄物をめぐる問題はいまだ解決していない。茨城県はいまの場所で保管を続けることを決めたが、宮城、栃木、千葉、群馬の各県での新たな処分場を建設計画は、地元の反対などでめどが立っていない。また、福島県以外の関東・東北7県の除染で出た土は約31.5万m3あるが、学校や公園などでの保管が続いている。実は処分基準がいまだ決まっていないからだ。早急に処分基準を策定する必要がある。
D 視点を変えると、建設産業界の果たす役割はこれからも大きい。汚染土の減容化や分級、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉技術など、研究開発への貢献だ。こうした技術への研究開発が今後のビジネス獲得・拡大に直結するといえる。
中間貯蔵施設建設地内にある除染で発生した汚染土などの保管場。2016年度は、15年度の試験輸送量の3倍に当たる15万m3を福島県内各地にある汚染土の仮置き場から施設内に運び入れる予定だ。
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