2016/11/04

【記者座談会】最高水準の技術で挑むリニア南アルプストンネルが起工/建コン協の経営分析、総売上高、営業利益とも4年ぶりに減少

A リニア中央新幹線(品川~名古屋間)の南アルプストンネル新設(長野工区)が1日に起工した=写真。安全祈願・起工式は、昨年12月の山梨工区(山梨県)、ことし1月の品川駅(東京都)に次いで3都県目になるね。

B JR東海(東海旅客鉄道)では、沿線の各都県ごとに安全祈願・起工式を計画している。長野県内では最初の本体着工だ。山梨県から直線で静岡県、長野県を通る全長約25㎞で、同線の山岳トンネルでは、中央アルプストンネル(約23㎞)を超えて最長となる。
C 標高3000m級の山々が連なる南アルプスを貫くため、このうち約4㎞が土被り1000m以上の区間になるという。なかでも最大の土被りは静岡、長野県境付近で約1400mに達する。これは、大清水トンネル(約1300m)を抜いて国内のトンネルで最大規模となり、高度な施工技術が必要になる。長野工区の最大の特徴だ。
B 長野工区は、本線トンネルのうち長野県内の約8.4㎞が工事範囲。工事は、小渋皮非常口、釜沢非常口、除山非常口の3カ所からトンネルの掘削作業を進める計画だ。工事期間は2026年11月30日まで。
D 高い土圧に加えて、懸念されるのは山脈内を走る地下水脈への対応だ。噴き出した地下水に手を焼いた山岳トンネル工事は、これまでにも数多くある。
C 山岳トンネルは、地質調査を何度繰り返しても、実際に掘ってみないと何が出るか分からない。このため、本坑を掘削する前に先進坑を掘って地質を確認しながら、本坑を掘っていくという。水平ボーリングひとつとっても非常に高度な施工技術が要求される。
A 山岳部では、複雑な地形の上にさまざまな岩盤が混在し、工事が難しい。南アルプストンネル工事は、ゼネコン各社がこれまで磨いてきた最高水準の施工技術が投入されることになるだろう。 

■建設コンサルタンツ協会、加盟会社の2015年の経営分析

A 話は変わるが建設コンサルタンツ協会が、加盟会社の2015年の経営分析をまとめた。
E 15年1-12月の決算業績をもとに集計し、会員会社457社のうち369社から回答があった。回答率は80.7%。このうち、専業社は154社で、回答率は82.8%だった。総売上高、営業利益とも4年ぶりに減少した。1社当たりの平均の総売上高は29億2100万円で前年比1.0%減、建設コンサルタント業務が売上高の80%以上を占める専業社は31億9900万円で0.9%減だった。減収により、営業利益、経常利益、当期純利益も減少している。
F 営業利益は1億6911万円で17.6%減、専業社は1億8700万円で16.4%減と、ともに15%以上低下している。また、営業利益率も7.0%から5.8%、専業社は6.9%から5.8%に減少した。建コン協は、減少の要因として、人件費、研究費・教育研修費、地代家賃の増加などを挙げている。
G 永冶泰司総務部会長は「固定費の増加が要因」と分析するとともに、魅力ある業界に向けて、収入を増やしつつ固定費を上げていかざるを得ないと指摘している。一方で、売上原価率は74.3%で同率、専業社は0.3ポイント減の73.5%だった。厳しい生産体制の中で、内製化に努めた結果、委託費率の減少につながったとともに、継続的なコスト削減、さまざまな施策の取り組みにより、生産効率を上げたことがうかがえる。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿