「100年の耐久性を持たせ、誰にでも簡単に使えるコンクリートを作らなければならない」。プレストレストコンクリート(PC)橋梁関連のエンジニアリングと資材供給を手掛けるエスイー(東京都新宿区)が開発した超高強度合成繊維補強コンクリート『ESCON(エスコン)』は、従来の鉄筋コンクリート(RC)やPCを超えた圧倒的な強度と耐久性を備えた新素材として注目を集めている。同社の森元峯夫会長とフランス留学時代の友人との再会をきっかけに、約3年の歳月を費やして誕生した。写真は炭素繊維と組み合わせ腐食劣化のない低荷重用受圧板「ESCONパネル」
森元会長は、核融合の専門家である留学時代の友人との出会いを「運命の出会い」と振り返る。その後、森元会長は友人を中心に、ナノテクノロジーという異業種の技術と知見を得ながら、あらゆる実験を繰り返していった。特にコンクリートの弱点だった曲げ強度を一般的なコンクリートの7倍以上、圧縮強度を6倍以上に強め、構造部材の軽量化が実現できたのは「ナノテクノロジーあってこそ」と強調する。
ESCONは、こうした「超高強度」に加えて、「高耐久性」「高流動性」を兼ね備えたことが特徴だ。組織構造が緻密で水も空気も浸透しないため、中性化による劣化がほとんどない。耐久性の面でもすぐれているため長寿命化を図ることができる。柔軟性の高い合成繊維を配合することで高い流動性も備え、超高強度合成繊維補強コンクリートでありながら従来のコンクリート同様に生コン工場で混合し、現場で打設ができるという。
森元峯夫会長 |
森元会長は日ごろから、鉄筋工や型枠工など建設就労人口の減少と高齢化によるコンクリート構造物の品質確保への影響に懸念を抱き続けた。だからこそ開発にあたっては「マニュアルどおりに使えば誰にでも使えるものを作りたい」との信念を貫いた。「地域建設業者でも誰でも使うことができれば、建設業界の構造改革につながる一手となるだけでなく、地方創生の呼び水として大きな革新をもたらす可能性がある」
ESCONを使った製品は多岐にわたる。環境防災分野では、超高強度を生かし、従来のPC製受圧板より約2分の1の軽量化を実現した『ESCON受圧板』、炭素繊維を組み合わせることで腐食劣化のない低荷重用受圧板『ESCONパネル』などがある。橋梁構造分野では、超高強度鉄筋を組み合わせることで軽量、薄型でありながら疲労耐久性を備えた道路橋床板「ESCONスラブ」を災害科学研究所と共同開発している。
軽量、薄型ながら疲労耐久性を備えた道路橋床板「ESCONスラブ」 災害科学研究所と共同開発した |
これらの製品の販売戦略を下支えするのは、建材メーカーやゼネコンなどが参画しているESCON協会だ。7月に発足し、現在は同社を含む28社に拡大した。協会会長も務める森元会長は「今後の活動として土木、建築、製造研究会をそれぞれ立ち上げ、誰でも簡単に作れるようにするための装置やシステムを構築する」考えで、応用分野の拡大に向けて、施主などとのタイアップも見据えている。特に「老朽化した床版の取り替え」は需要が増えることから、これを取り込むことで早急に実例を増やす計画だ。
今後については「あらゆることに可能性を広げ、普及させることが最大の目的」と語る。例えば「戸建て住宅の耐力壁にもESCONを使うことで屋根を軽量化し、耐震性の向上につなげたい」とも考えている。ベトナムなど東南アジアへの輸出も視野に入れている。
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