2015/03/06

【現場最前線】中川「七曲り」を総合力で円滑施工! 深層混合処理船使いこなす中川護岸耐震補強

東京都が複数工区に分けて実施している中川護岸耐震補強工事のうち、最大規模の「その25」が大豊建設・西武建設・古川組JVの施工で進められている。国内河川で最大級となる30万m3のCDM-FLOAT工法による地盤改良工事が最盛期を迎える現場では、工期短縮のために倍増した4隻の作業船が休みなく改良体を構築する。「協力業者との強い絆により、これまでの中川の難工事を竣工してきた」。現場で指揮を執る大豊建設東京支店土木部の三好浩司中川統括所長は、協力業者も含む総合力に絶対の自信を見せる。水陸からの切れ目ないセメント輸送など豊富なノウハウに裏打ちされた円滑な施工の実現により、工事は順調に進捗している。

 中川の中でも河道が大きく蛇行した「七曲り」と呼ばれるエリアに位置する現場付近では、過去に多くの水害が発生しており、護岸の耐震化が急務となっている。都は2009年度から耐震補強工をスタート。大豊建設はJV代表として既に6工区の工事を完了させ、うち1件では都の建設局長賞を受賞している。
 大豊建設JVが現在進めている「中川護岸耐震補強工事その25」では、護岸の耐震性と親水性を向上させるため、上流工区(長さ244m)、下流工区(同238m)の護岸耐震補強工事と、長さ638mの護岸整備を合わせて施工する。工期は16年3月まで。既に護岸沿いには最大長さ約37mの鋼管矢板378本の打設が完了し、地盤改良工事が進んでいる。
 地盤改良では、CDM-FLOAT工法(深層混合処理工)により最大長さ27.3mの改良体を計9065本構築する。設計上、使用する作業船は2隻だったが、約2年半の工期で完成させるため作業船を倍増させた。2月末時点で約19万m3の地盤改良が終わり、6月上旬には深層混合処理工がすべて完了する見通しだ。

◆セメントのスムーズな供給がカギ
 三好統括所長は、「工事をスムーズに進めるには、4隻の深層混合処理船をいかにうまく動かすか、セメントの供給をいかに止めないかがかぎになる」と説明する。工事には1日最大約300tのセメントが必要となり、うち約200tは水上、残り約100tを陸上輸送によって確保する。
 セメントの輸送に当たっては、下流側にある平和橋の桁下が低く、一般的なセメント運搬船が通過できないため、橋の手前で別の船に積み替えて現場のプラントに持ち込む。基本的に水上輸送がメーンだが、運搬船だけで供給量が確保できない場合は陸路でカバーするため、調達作業には日々神経を使っている。
 作業船1隻当たり、1日に400-500m3を地盤改良する。改良体1本当たりの構築にかかる時間は長さ24mの場合約1時間。作業は朝7時から夜9時までのため、1時間の休憩時間を除くと、1台当たりの最大構築本数は13本になる。
 現場付近にはガソリンを積んだタンカー船が1日5-10隻往来する。「毎日、タンカー船の通過時間を確認した上で作業工程を決める。プレジャーボートなども予告なく通るため気を抜けない」(三好統括所長)と、事故などを防止するための安全管理にも細心の注意を払う。
 
◆近隣住民とのコミュニケーション、密に
 一方で騒音・振動計の設置など、近隣住民に対する安全対策、防音シートの設置による騒音対策にも最大限に取り組んでいる。散歩コースにもなっている河川沿いにはペットの写真を張り出すボードを設置するなど、住民とのコミュニケーションづくりにも力を入れている。触れ合いに主眼を置いた地道な取り組みにより、三好統括所長は「工事に対する理解も得られつつある」と確かな手応えを感じている。4月に予定している近隣住民向けの現場見学会は早くも満員御礼だ。
 今後はさらに上流側の護岸耐震補強工事が計画されている。三好統括所長は、これまでに培ったノウハウを生かして水害から住民を守る「七曲り」のエキスパートとして、「最後まで見届けたい」と先を見据える。
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