2015/03/14

【拡張現実】AR技術を活用せよ! 大手重電メーカーが支援システムを続々開発

大手重電メーカーで、AR(拡張現実)技術を活用してインフラメンテナンスに乗り出す動きが加速してきた。三菱電機がタブレット型端末で撮影したカメラ画像から地中に埋設された配管の正確な位置を特定させる技術=画像=を、日立製作所は着脱式カメラを生かしたインフラの保守・点検作業支援システムをそれぞれ開発している。メンテナンス作業の効率性や精度、安全性の向上などが見込まれるとし、両社は今後の維持管理市場への事業展開に期待を寄せる。周辺事業も含めた市場の拡大が見込まれる中、その需要を取り込めるツールとみている。

 三菱電機は、上下水道の配管など地下に埋設されている公共インフラを3次元で表示するAR技術を開発した。タブレット型端末のカメラで撮影した実際の風景に、埋設されて見えないはずの設備を浮かび上がらせ、実際の配管の位置を示す仕掛けだ。
 設備の位置の特定を早めてインフラ維持管理の効率化に生かそうと、実証実験を経て2016年度以降の事業化を目指している。
 技術では、まずタブレット端末のカメラで風景を撮影し、内蔵されたGPSやセンサーからカメラのおおまかな位置情報を取得する。次に、詳細位置情報を持つ埋設設備のデータが蓄えられた地理情報システム(GIS)から、タブレット型端末周辺の埋設設備データを取得、こうしたデータから詳細位置を特定する。従来の技術ではQRコードを使った位置合わせが必要で、作業範囲が広がればQRコードの設置にも大きな手間がかかる。今回は画像認識と地理情報システムにより位置合わせができるため、コードの設置が不要になった。
 埋設設備のデータをもとに地面からの深さや緯度経度が取得でき、埋設設備のイメージを遠近感や深さのある3次元画像に再現することができるのも大きな特徴だ。複数の工事担当者が状態を共有できるため、業務に関する情報共有も早い。また、タブレット型端末という現地で簡単に持ち運べることも、いち早い共有に寄与している。
 埋設設備のデータが整備されているのは全国でも4割ほど。今回の技術が活用できる範囲はまだ限られるが、同社は「データの整備は着々と進みつつある」とみており、そうした状況が進むことが将来のビジネスチャンスになると期待をかける。

日立製作所のハンズフリー型の現場保守・点検作業支援システム
日立製作所は、ウエアラブルカメラ付きのヘッドマウントディスプレーとAR技術を活用した現場保守・点検作業支援システムを開発した。現場の撮影や作業ナビゲーションの確認をハンズフリーで実施できるとともに、ウエアラブルカメラで見えにくい場所の撮影や確認がしやすいことで、作業の効率化や安全性の向上などに生かすという。
 この技術は、現場作業者が機器や設備に貼り付けたマーカーをカメラで読み込むと、AR技術による作業ナビゲーションがヘッドマウントディスプレーに表示される仕組み。作業者は作業中の目線を変えずに必要な情報を確認できる上、両手で作業に集中できる。カメラは小型で無線通信機能があるため、死角となりやすかった設備の裏側や隙間などの撮影がしやすい。最長8時間持続するバッテリーや高輝度のディスプレーを備え、屋内外の視認性や連続作業にも強い。
 想定している現場は工場やプラント、水処理施設など。機器や設備の納入後に常時稼働するものも多く、異常を早期に検出する必要性が高い設備での活用を想定している。こうした現場は敷地内に複数の施設や拠点があるほか、広大な敷地にあるケースが多い。
 今回のシステムは、同社のクラウド型機器保守・設備管理サービス「ドクタークラウド」と連動して現場の情報を遠隔地と通信できるため、熟練の技術者が遠隔地で現場に指示を出し作業をまとめることも可能だ。今後は社会インフラ事業者向けに、2015年7月から販売を開始する予定だ。
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