2015/03/08

【現場の逸品】ひび割れても60キロN耐える! 逆ねじ構造加えた接着系アンカー「Zボルト」

「接着系と金属系の利点を合わせたベストコンビネーションの耐震用アンカーを日本で販売することになった」と、日本ヒルティで接着系アンカー製品担当課長を務める井岡慎治氏は胸を張る。同社は海外で反響を呼んでいる耐震用アンカー『Zボルト』を、3月から日本で販売することを決めた。コンクリート躯体にひび割れが発生するような極限状態でも、アンカー性能を維持できる究極のボルトだ。

 Zボルトは、先端が逆ねじ構造となり、ボルトナットを締めるほど外に向かって働く支圧効果が生まれる。地震によって周辺のコンクリートに生じた「開閉したひび割れ」にも性能を発揮することから、欧州技術認証(ETA)制度で2014年にスタートした耐震C2評価を接着系アンカーとして唯一取得している。
 欧州では、その性能に注目が集まり、発売から3年間で年率30-40%増の幅で着実に売上げを伸ばしている。使用用途はさまざまだが、保管倉庫でのラック留め付けに採用されたプロジェクトでは一度に2万4000本が使われた例もある。イタリアやニュージーランドなど地震が比較的多い国を中心に販売が好調に推移している。
 他の製品とは、何が違うのか。一般的な接着系アンカーボルトは、ボルト穴に注入されたグラウトの接着力とせん断抵抗で引き抜きを防ぐ。井岡氏は「これに支圧効果を付加させた点が大きな違い」と強調する。建設専門紙記者20人ほどを集めた公開試験では同業他社との性能の違いが明らかとなった。

他社製品と比較したひび割れ時の引き抜き試験では差が歴然となった。手前がZボルト
鉄筋コンクリートに打設された2本のアンカーボルトの周辺に、あえてひび割れを発生させ、引っ張り試験を実施し、どこまで耐えられるかを比べた。いずれも50㌔N(ニュートン)の引っ張りに耐えられる性能がある。ボルト周辺には開閉状態のひび割れを発生させているため、他社製は27㌔Nで性能が落ち始めたが、Zボルトは60㌔Nまで耐える結果となった。
 「ひび割れの幅が0.8mm以内までは、性能が落ちずに維持できる」とは井岡氏。この性能の違いは明らかだが、日本ではひび割れ発生を前提に設計を行わないだけに、どこまでZボルトの実力を評価されるかは未知数だ。技術本部の植村大輔本部長は「欧米の概念を理解している日本の技術者も多い。地道に実績を積み上げていきたい」と先を見通している。
 発売日は3月1日。ボルト径は8-20mmを用意し、鉄とステンレスの2種類で全34品目を取りそろえる。
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