2015/03/16

【山下PMC】次世代の社会基盤構築に何が必要か 2020以降の建設学

昨今、建設分野における公共投資のあり方が目に見える形で変化している。その引き金になっているのが法や制度の改正である。この連載の初回に記した公共工事品確法などはその典型である。加えて2015年は、建築基準法・建築士法が6月に、省エネ法・電気事業法あるいは民法にいたるまで、法制度改正が続々と予定されている。一体これは何を示唆するのだろうか?写真は橋梁点検の様子。
 もちろん、まずは政府が強いリーダーシップで推し進めようとする景気刺激策の一環である。成長戦略は建設分野でも着実に実践されている。社会の中のいたるところに潜んでいる課題を解決し、新たな建設ビジネスを生み出して建設市場を活性化させる機会を創り出そうとしているのである。
 でもそれだけではない。今後10-15年間にわたって、1960年代から70年代の高度成長時代に集中投資してきたインフラや建築物が次々に償却を迎えるとこれまでにも書いてきた。日本経済の礎を築いてきたこれら対象物の物量は、それこそ膨大である。次の償却に向けて次世代の社会基盤構築のための再投資を真剣に考えていかなければならない。間違いなく訪れる人口減少・税収減・少子高齢化を想定して行うのである。これまでと同じように造って良いわけがない。ナショナル・レジリエンス(国土強靭化)と盛んに叫ばれるが、これはなにもハード(建設物)に限った話ではない。ハードはもちろんのこと、国家のあり方から社会構成・経済体制・国民生活維持に至るまで、広大な範囲のソフトを統合した強靭化でなければならない。だからこそ、そのための呪縛を解きほぐす方策として準備されているのが、これらの改正にほかならない。

 その先の時代に向けて、大きく以下の3つの課題を解決していく必要があるとわたしは考える。
 (1)インフラや建築物の老朽化や天災を含む各種の災害に対処した、いかに安全な国土・インフラ基盤・施設を築いていくことができるか!?
 (2)日本のモノづくり・営みづくりを存続させ国際競争力を保持するための総合的インフラ網をどう整備できるか!?
 (3)自治体と企業、そして学術機関などが協力しあって地域社会経済を活性化させていく地域創生をどのような形で実現できるか!?

 これらの課題は急にはやって来ない。しかし何もしないでいると、やがては国土や地域そして社会を確実に蝕んでいくことになる。現在到来している社会状況は、今後の国家財政状況から考えても、これらの課題を解決する最後のチャンスであろう。これからの数年間でいかに有効な再投資ができるか! がかぎとなる。決して無駄な投資など許されない。
 したがって公共投資においては、今後PRE(公共不動産)戦略が欠くことのできない施策となる。誤解しないでほしいが、これは単純にLCM(ライフサイクル・マネジメント)計画を実行するような生易しい話をしているのではない。減築したり、転用や賃貸を図ったり、売却や除却にいたる統廃合など、少なからず痛みを伴う施策を含むものである。さらには自治体の統合や合併、県を超えたリージョンといわれる単位の形成にまで及ぶ可能性だって考えられる。いわゆる道州制に向かう流れが必然的に生まるかもしれない。インバウンド(訪日外国人)拡充戦略になぞらえるなら、点(都市)と点(観光地)を線(ゴールデンルート)で結び、日本中にゴールデンルートを幾重にも増やして枝線にもつなげていく。その線を地域の自治体や産業が一体となって、さらに面として拡げていく。この戦略にうまく相乗させたり、同様の手法で基盤構築にも応用していけば良いのではないか。これからは産官学が一丸となる取り組みが必ず求められるようになる。
 今起きている現実をネガティブにとらえれば不安はいくらでも積み上がる。逆に、これだけ多くの制度改変を得手に組み合わせていければ、幾通りもの解決策を見いだせるはずである。
 さあ、この変化を追い風にして成熟先進国としての模範的な明日を切り拓いていくのは、いったいどんな人たちなのだろうか!?
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