2015/03/19

【伊東豊雄】薬師寺食堂再建の内観設計 古くて新しい「淡く広がる空間」

奈良時代前半に建設された奈良市の薬師寺で、973年に焼失した食堂(じきどう)が再建される。監修を奈良文化財研究所元所長の鈴木嘉吉氏、施工を竹中工務店、外観設計を文化財保存計画協会、内観設計を伊東豊雄建築設計事務所が担当する。画像は内観イメージ。

 外観は建設当時のものを忠実に再現する一方で、内観は伊東氏の設計に一任された。記者会見で伊東氏は「歴史的建築物の修復は初めての経験だが、空間のイメージなど、これまでの建築設計との共通点も多い。淡く広がる空間を感じてもらいたい」と意気込みを語った。
 内部は鉄骨を木材でカバーした柱・梁を使用することで強度を高めて柱の本数を削減し、スパンを拡げることで説教や芸能など多様な用途に使用できる空間を約400席確保する。
 中央にある6m四方の阿弥陀浄土図から広がるように金色に塗装したアルミパネルを積層して配置する。高い金属加工技術を有する菊川工業がパンチング加工することで、独特の天井デザインと空間の広がりを生み出す。
 阿弥陀浄土図を描いた日本美術院代表理事の田渕俊夫氏は、「描きたいと思ったからといって描けるものではなく、強いプレッシャーを感じた」と話す。その一方で、「伊東先生に通常ではあり得ない天井を設計してもらったことで気が楽になった。自分流の仕事で壁画を描くことができた」という。

記者会見する伊東豊雄氏
伊東氏に設計を依頼した薬師寺の山田法胤管長は「空間の魔術師である伊東先生が設計することで、食堂という空間が持つ魅力を生かしてもらえると考えた。古くて新しい空間になることを期待している」と語る。
 食堂の規模は延べ649㎡。古代の食堂は僧侶の斎食や仏教儀礼、年中行事が行われる儀礼空間として使われた。再建後は薬師寺の新たな拠点として法要・法話などに使用するほか、「阿弥陀如来三尊像」や「仏教文化伝来と薬師寺縁起大壁画」といった薬師寺の歴史と価値を伝える展示も行う方針だ。総事業費は約16億円。2017年5月の完成を目指す。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【建築士会】建築士の活性化と未来語り合う 関東甲信越ブロック会青年会 関東甲信越建築士会ブロック会青年建築士協議会(森大樹会長)は19日から21日にかけて、東京都江東区のホテルイースト21で東京大会を開いた。20日に開かれた全体会議であいさつに立った森会長は「大会により多くの会員と広く情報を共有し、建築士会の発展と未来の風を感じてもらいたい」と述べた=写真。  また、大会を共催した東京建築士会の中村勉会長は「青年会は建築士の役割と未来について一番真剣に語り合っている。各地域の人たちとワークショップなどの活動に… Read More
  • 【建築】「建築と社会賞」7点、青年建築家・技術者26人表彰 日本建築協会 日本建築協会(香西喜八郎会長)は18日、オオサカマーチャンダイジング・マート(OMM)ビルで「読者と選ぶ『建築と社会』賞」と「青年建築家・青年技術者の顕彰」の表彰式を開いた。「建築と社会」賞には作品部門4点と論考部門3点、青年技術者の顕彰には5部門26人を選出し、香西会長から受賞者に表彰状と記念品が贈られた。写真は「建築と社会賞」受賞者。  読者と選ぶ「建築と社会」賞は、会誌『建築と社会』の趣旨にふさわしい、社会性・環境などに配慮した有意… Read More
  • 【JIA出前講座】答えはひとつじゃないよ! 小中学生、まちづくり実習で学ぶ 日本建築家協会(JIA)近畿支部兵庫地域会(長尾健地域会長)は、小・中学生を対象にした出前講座事業を積極展開している。13日には神戸市兵庫区の市立明親小学校で、21日には同市東灘区の私立灘中学校で段ボール製9立方cmの立方体(T-CUBE)を用いたまちづくりの実習を行った。受け入れる学校側は、広い視野や集団で考えることの習得、職業理解を深める一助となることなどを求めており、子どもたちからも好評のようだ。写真は明親小学校での様子。  この事… Read More
  • 【シンポジウム】7月12日、JIAが五輪施設計画と街づくりを討論 参加無料! 日本建築家協会(JIA)は7月12日にシンポジウム「新国立競技場とオリンピック施設計画に何が必要か?」を東京都渋谷区の建築家会館で開く。パネリストとして建築家の元倉眞琴氏、作家の森まゆみ氏、北大准教授の坂井文氏、JIA関東甲信越支部長の上浪寛氏を招き、良質な建築、美しい街づくりのための制度設計をテーマに具体的な行動につながるディスカッションを行う。コメンテーターにJIA会長の芦原太郎氏、JIA名誉会員の長島孝一氏が参加する。  参加無料、定… Read More
  • 【東京建築賞】都知事賞に『東京駅丸の内駅舎保存・復原』 専門家の協働評価 東京建築士事務所協会(大内達史会長)は、「東京建築賞第40回建築作品コンクール」の受賞作品を発表した。今回は4部門に計70点の応募があり、東京都知事賞に『東京駅丸の内駅舎保存・復原』が選ばれたほか、各部門の最優秀賞として戸建住宅部門に『東村山の家』、共同住宅部門に『ISANA』、一般一類部門に『扇屋旅館』、一般二類部門に『山梨県立図書館』が決まった。表彰式は30日に京王プラザホテル(東京都新宿区)で開かれる総会後に実施する。  栗生明選考委… Read More

0 コメント :

コメントを投稿