2015/03/29

【現場の逸品】構造物の塗膜を数時間で除去! 航空機技術から開発した「EPP工法」

「翌日には塗膜が浮き上がり、コテで簡単に取り除くことができる」と、JFEエンジニアリング橋梁事業部営業部の平本高志開発営業室長は、水性塗膜剥離剤『エコ・ペイント・ピーリング(EPP)工法』の効果を説明する。受注した橋梁補修工事の塗装塗り替え作業用に導入したが、驚くほどの剥離効果に日本の独占販売権を取得し、1年前から外販に乗り出した。採用数は現時点で17件に達し、このうち14件が他社の施工する補修工事に採用されている。

 橋梁の塗膜を取り除くためのEPP工法は、剥離剤と洗浄剤の2つで構成する。剥離剤が塗膜の化学結合を破壊し、酸素の膨張や解放反応によって、24時間以内に塗膜は持ち上がる。あとはコテで取り除き、こびりついた細かな塗膜は洗浄剤を使ってきれいにする。平本室長は「剥離剤も洗浄剤も水性であるため、火災の危険性があるシンナーを使う場面は一切ない」と付け加える。
 厚生労働省は2014年5月に鉛などの有害物を含む塗料の剥離作業に対し、粉じん対策を厳しく規定する通達を出した。日本道路協会発行の防食便覧では橋梁の塗装塗り替え基準が強化され、下地が見えるまでしっかりと塗膜を剥がす必要性も示された。これにより現場では、砂や鉄粉を研磨剤として吹き付けるブラスト工法の採用が難しくなった。

橋梁の塗装直しは、十数年の周期で実施される。10年ほど前はまだ鉛系塗料が採用されていたため、現在の塗り直し作業では粉じん対策を強化し、さらに下地まで剥がす二重苦の対応が求められる。塗膜除去には有効なブラスト工法だが、対策のコストや手間がかさむ。同社は「塗膜除去作業に活用できるのではないか」(平本室長)と、オランダ大手化学メーカーのアクゾノーベル社が飛行機の機体チェック用に開発した剥離剤に目を付けていた。
 現在施工中の長大橋梁補修工事では、塗装の塗り替え作業が含まれていた。受注後のVE提案としてEPP工法の採用が認められ、約2万3000㎡に初適用した。対象の橋梁は塩害対策によって塗装厚が1mmに達し、EPPの剥離効果を図るには格好の題材であった。

仲の瀬橋(仙台市)の補修にも使われた
施工中を含めた17件の採用実績は、剥離面積にして12万3900㎡に達する。自社施工では首都高速道路会社発注で現在施工する堀切小菅JCT間改良上部・橋脚工事と25首-5(修)上部工補強工事1-105の2件に適用中。他社への外販では1700㎡に採用された仲の瀬橋(仙台市)など14件に及ぶ。橋梁事業部営業部統括スタッフの森田陽子さんは「苦労したが、販売網が整いつつあり、外販も着実に進み始めた」と明かす。
 溶剤系の販売は同社にとって初めての経験。工事の元請企業への直接営業も進めているが、塗装専門工事会社への売り込みを拡大するため、商社や問屋へのルート開拓にも力を注いできた。水性の塗膜剥離剤であるため、危険物扱いの指定を受けないため、倉庫での保管が可能である点も受け入れられている。
 使用量は剥離面積1㎡当たり1㌔ほど。小口の直販では利益確保が難しいため、20リットルのポリエチレン容器で50-100缶の規模で販売していきたいが、「まずは一度試してもらいたい」と平本室長は呼び掛ける。剥離作業がやっかいなアンカーボトルの塗装部分に使ってみたいとの問い合わせにも、サンプルを送り反応を見ている。「課題は塗料の倍以上にも達する価格だが、ブラスト工法採用時に必要な対策費用や作業安全性を考えれば、導入効果は明らか」と自信をのぞかせる。
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