2015/11/15

【現場最前線】国内3例目の台形CSGダム、急速施工は効率が肝 厚幌ダム本体工事


 北海道厚真町を流れる厚真川の上流で、安藤ハザマ・岩田地崎建設・田中組JVが国内3例目となる台形CSGダムの建設に挑んでいる。この「厚幌ダム建設事業 ダム本体工事」では、大量・高速施工が可能なCSG工法により、約50万m3の堤体をわずか9カ月で打設する。現場を指揮する上村雅彦統括所長は「通常のコンクリートダムに比べて施工スピードが1.5倍から2倍あり、それだけに短期間に大量の資機材と人員を集め、それらを工程が効率良く進むようにコントロールしなければならない難しさがある」と同工事の醍醐味(だいごみ)を語る。
 台形CSGダムは、コンクリートダムで採用される直角三角形の断面形状に比べて安定性が向上するため、堤体に強度の低い材料を利用できるのが特徴。その材料には現場周辺で採取可能な砂礫や岩石などで製造したCSGを使用し、打設したCSGをコンクリートで覆って水や地震などに耐えられる構造にする。
 上村統括所長は、この二重構造を“まんじゅう”に例え、「皮の部分は通常のコンクリートダムと同じ品質だが、あんこの部分となるCSGは、強度の低い母材を使用することができ、簡易な設備で製造できる」と説明する。

母材山(左上)とCSG製造設備(手前)など仮設備

 厚幌ダムでは、貯水池予定地内の母材山から採取した岩石をCSGの材料に活用。それを8cm以下に砕き、ストックヤードで粒度分布や水分を確認・管理した上で、セメントや水と混合してCSGを製造している。
 混合装置は通常1つの混合方式で構成するが、CSG製造設備に安藤ハザマの独自技術を投入し、自然落下方式の縦型ミキサーでCSG材とセメントを混合後、さらに動力を使った強制混合方式で水を霧状に吹き付けながら混合する。2回の混合は「品質のバラツキを抑える」のが狙いで、その設備が合計3基あり、1時間当たりの製造量は最大345m3を誇る。
 CSG製造設備は連続稼働が可能で、材料の大量供給によって急速施工を実現。地形がなだらかなため、製造したCSGを40tのダンプトラックでダム本体に直接搬送できるのも急速施工の一助となっている。
 堤体の打設はことし4月に着手。その手順は、まずブルドーザーでCSGを25cmずつ敷き均し、3層75cmになった段階で11tの振動ローラーで締め固める。この作業をもう一度行い、CSGの打設高さが150cmになった段階で、その外側にダムの表層となるコンクリートを打設する。これら一連の作業を30回以上繰り返し、約50万m3の堤体を築造する。9月17日現在の打設量は約12万m3で、CSGの打設作業を行っている真っ最中だった。

CSGの打設状況

 打設に当たっては、品質を確保するため、事前に試験施工し、振動ローラーによる転圧の回数など細部も含め、何種類もの施工方法や仕様を試した。
 CSG施工のリーダーとして現場をまとめる諸澤正毅係長は「台形CSGダムは国内の事例が少なく、当社(安藤ハザマ)でも初めてだが、職員全員が知恵を絞りながら施工を進めている」とし、「良い品質のダムを早期に完成させ、発注者の信頼を得るとともに、対外的にも成果をアピールしたい」と自信をのぞかせる。
 工事全体の進捗率は約50%。現場ではJV職員44人、作業員約300人が大量・高速施工に24時間作業で対応している。今回でダム現場が5つ目となる上村統括所長は「現場で働く全員の力を1つに合わせ、課題を克服し、工夫しながら良いものを安全につくっていきたい」との姿勢を示し、「厚幌ダムは地元の悲願であり、1日にも早く地元の方々に引き渡したい」と口元を引き締める。

【工事概要】

▽工事名称=厚幌ダム建設事業 ダム本体工事
▽発注者=北海道胆振総合振興局
▽請負者=安藤ハザマ・岩田地崎建設・田中組JV
▽工期=2014年10月8日-18年3月20日
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【現場最前線】大深度を安全・高精度に! 水中作業機「T-iROBO UW」が活躍する天ケ瀬ダム再開発現場 大成建設がアクティオ、極東建設と、ダムのリニューアル工事向けに開発したシャフト式水中作業機「T-iROBO UW(アンダーウォーター)」が、国土交通省近畿地方整備局発注の「天ケ瀬ダム再開発トンネル式放流設備流入部建設工事」(京都府宇治市)で活躍している。急傾斜地、大深度という条件化で岩盤掘削などの水中作業を遠隔操作によって安全、高精度に進めることができるほか、仮設桟橋が不要なため、工程も短縮する。8月から前庭部の岩盤掘削に本格着手する。  … Read More
  • 【大学生が書く!】綿密な計画と効率化・省人化で工期順守 「住友不動産金町I街区」現場 下町の情緒を残しながら最先端の大学施設が建設されるなど、新旧入り交じる街並みの東京都葛飾区金町に、竹中工務店が商業施設併設タワーマンション「住友不動産金町I街区」の建設を進めている。機能的で良質な住宅というニーズを満たすため、施工者はどう取り組むのか。学生たちは躯体工事や免震装置、内装工事といった一連の工程を見学し、独自技術や職人とのやりとりなど、星拓治作業所長の解説を興味津々に聞き入った。芝浦工業大学工学部建築工学科志手研究室、同蟹澤研究… Read More
  • 【現場最前線】工期、地中支障物…プレッシャー乗り越え若手が成長した現場 東北新幹線荒川橋梁橋脚耐震補強工事 東鉄工業が施工していた東北新幹線荒川橋梁の橋脚耐震補強工事が完成した。当初予定より工期が約3カ月短縮されるとともに、鋼製矢板の仮締切工では地中支障物に作業を阻まれる中、夜間作業の追加や発注者と現場、支店、本社が一丸となった工法変更などで難局を乗り切った。  同工事は、首都直下地震対策の主要プロジェクトとして東日本旅客鉄道(JR東日本)東京支社が発注。東京都板橋区と埼玉県戸田市の境を流れる荒川を跨ぐ荒川橋梁は、東京圏と東北・北陸エリアを結ぶ最… Read More
  • 【現場最前線】コンクリ養生に新技術! 熊谷組の田尻地区函渠その5工事 熊谷組は、東京外かく環状道路千葉県区間のうち「田尻地区函渠その5工事」(千葉県市川市)の施工を進めている。大規模な開削工法が見どころで、地下に降りると大空間が広がるダイナミックな現場でもある=写真。この現場を束ねる町田憲泰作業所長は、これまで3環状(圏央道、外環、中央環状)の施工に長く携わってきた。酸いも甘いも噛み分けてきた道路工事のプロは、どのように現場と向き合っているのか。  この工事は国土交通省関東地方整備局首都国道事務所が発注し、国… Read More
  • 【現場最前線】内空断面189㎡! 地元の期待を背負い挑む「気仙沼第2号トンネル」 佐藤工業が、宮城県気仙沼市で「国道45号気仙沼第2号トンネル工事」の施工を進めている。長さ1167mの山岳トンネルだが、唐桑側坑口は唐桑北インターチェンジからの合流部で加速車線を加えた3車線の大断面となる。内空断面189㎡という国内有数の大断面である上、風化が進んだ地山を掘削する難易度が高い工事だ。大断面部を施工中の現場を取材した。写真は切羽の状況。中央は先進導杭。  この工事は、国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所が発注した。三陸… Read More

0 コメント :

コメントを投稿