北海道厚真町を流れる厚真川の上流で、安藤ハザマ・岩田地崎建設・田中組JVが国内3例目となる台形CSGダムの建設に挑んでいる。この「厚幌ダム建設事業 ダム本体工事」では、大量・高速施工が可能なCSG工法により、約50万m3の堤体をわずか9カ月で打設する。現場を指揮する上村雅彦統括所長は「通常のコンクリートダムに比べて施工スピードが1.5倍から2倍あり、それだけに短期間に大量の資機材と人員を集め、それらを工程が効率良く進むようにコントロールしなければならない難しさがある」と同工事の醍醐味(だいごみ)を語る。
台形CSGダムは、コンクリートダムで採用される直角三角形の断面形状に比べて安定性が向上するため、堤体に強度の低い材料を利用できるのが特徴。その材料には現場周辺で採取可能な砂礫や岩石などで製造したCSGを使用し、打設したCSGをコンクリートで覆って水や地震などに耐えられる構造にする。
上村統括所長は、この二重構造を“まんじゅう”に例え、「皮の部分は通常のコンクリートダムと同じ品質だが、あんこの部分となるCSGは、強度の低い母材を使用することができ、簡易な設備で製造できる」と説明する。
母材山(左上)とCSG製造設備(手前)など仮設備 |
厚幌ダムでは、貯水池予定地内の母材山から採取した岩石をCSGの材料に活用。それを8cm以下に砕き、ストックヤードで粒度分布や水分を確認・管理した上で、セメントや水と混合してCSGを製造している。
混合装置は通常1つの混合方式で構成するが、CSG製造設備に安藤ハザマの独自技術を投入し、自然落下方式の縦型ミキサーでCSG材とセメントを混合後、さらに動力を使った強制混合方式で水を霧状に吹き付けながら混合する。2回の混合は「品質のバラツキを抑える」のが狙いで、その設備が合計3基あり、1時間当たりの製造量は最大345m3を誇る。
CSG製造設備は連続稼働が可能で、材料の大量供給によって急速施工を実現。地形がなだらかなため、製造したCSGを40tのダンプトラックでダム本体に直接搬送できるのも急速施工の一助となっている。
堤体の打設はことし4月に着手。その手順は、まずブルドーザーでCSGを25cmずつ敷き均し、3層75cmになった段階で11tの振動ローラーで締め固める。この作業をもう一度行い、CSGの打設高さが150cmになった段階で、その外側にダムの表層となるコンクリートを打設する。これら一連の作業を30回以上繰り返し、約50万m3の堤体を築造する。9月17日現在の打設量は約12万m3で、CSGの打設作業を行っている真っ最中だった。
CSGの打設状況 |
打設に当たっては、品質を確保するため、事前に試験施工し、振動ローラーによる転圧の回数など細部も含め、何種類もの施工方法や仕様を試した。
CSG施工のリーダーとして現場をまとめる諸澤正毅係長は「台形CSGダムは国内の事例が少なく、当社(安藤ハザマ)でも初めてだが、職員全員が知恵を絞りながら施工を進めている」とし、「良い品質のダムを早期に完成させ、発注者の信頼を得るとともに、対外的にも成果をアピールしたい」と自信をのぞかせる。
工事全体の進捗率は約50%。現場ではJV職員44人、作業員約300人が大量・高速施工に24時間作業で対応している。今回でダム現場が5つ目となる上村統括所長は「現場で働く全員の力を1つに合わせ、課題を克服し、工夫しながら良いものを安全につくっていきたい」との姿勢を示し、「厚幌ダムは地元の悲願であり、1日にも早く地元の方々に引き渡したい」と口元を引き締める。
【工事概要】
▽工事名称=厚幌ダム建設事業 ダム本体工事
▽発注者=北海道胆振総合振興局
▽請負者=安藤ハザマ・岩田地崎建設・田中組JV
▽工期=2014年10月8日-18年3月20日
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