建築家・長谷川逸子氏の1972年から2014年までの主要作品を網羅した全3巻の集大成だ。第1巻には公共建築、第2巻に民間建築とコンペ案、第3巻に集合住宅と初期住宅建築が集められ、全91作品が建物の種別ごとに編纂されている。写真とスケッチでつづる作品集は建築作品集らしくないかもしれないが、軽やかな建築を目指してきた長谷川氏らしい作品集ともいえる。
70年代に台頭してきた「野武士」世代の建築家と35mmカメラを手に建築写真の新しい表現を模索してきた大橋富夫氏、藤塚光政氏、山田脩二氏ら写真家たちの作品が並ぶ様は圧巻だ。ページをめくっていると建築が周辺の環境を映して表情を変え、実際にその建築の中を歩き、風や光を感じた心地がする。
パンチングメタル、屋上緑化・ランドスケープデザイン、鉄骨全溶接--。写真でつづられた作品集からは、菊竹清訓・篠原一男の弟子、市民参加の実践者というこれまでの文脈とは異なる長谷川氏の実像が浮かび上がってくる。(鹿島出版会・3万円+税)
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