防水材メーカーのアーキヤマデ(本社・大阪府吹田市、山出満社長)は、屋上防水シートの破断を防ぐ固定システム「チューブワッシャー」を開発した。シートを接着した金属部分に長期間にわたり圧力がかかることで破断する不具合を、金属部とビスの間に新部品を組み込むことで解決する。開発を担当した大西裕之技術開発本部副本部長は「従来と同程度のコストで、さらなる安全と信頼のできる商品を提供していく」と開発の成果を口にする。
マンションや学校などの屋根部で普及する塩ビ樹脂系防水シートは、金属製のIHディスクとFL鋼板を屋根にビスで固定し、熱処理を施すことで金属部と防水シートを接着する。溶剤よりも一体化と水密性で信頼性は高いが、長期間に使用すると、金属部付近の防水シートに圧力がかかり、破断するなどの不具合を生じるケースがあった。
施工イメージ |
同社は防水シートを接着するIHディスクと屋根に埋め込むビスとの間に装着する“緩衝材”としてチューブワッシャーを考案した。防水シートと同様に樹脂製で、垂直・水平方向の荷重試験をクリアし、耐久、耐溶剤、耐熱、耐浸水の性能を持つ。ビスとの接続部分が間接の動きをすることで、屋根との固定部にかかる力を軽減。力が長期間にわたってかかり続けることで生じるビスの引き抜けを予防する。
強風などで防水シートがばたつき、ねじれるような力がかかった際にも、IHディスク部が直接ビスで固定されていないため、ディスクの端部にかかる荷重が軽減され破断防止につながる。回転疲労試験では、従来の工法では8万5000回でビスが回転してしまったのに対し、チューブワッシャー仕様では、11万回でも回転は確認されなかった。
現場作業ではチューブワッシャーの分だけIHディスクより下にビスが埋まることになるため、ビスがせり上がってきても、周りを踏み抜いて防水シートをビスが突き破る心配もない。外気温と室内気温の違いで発生する結露も、金属に比べて熱を伝えにくい樹脂製のチューブワッシャーを介在させることで防止することができる。
長さ26mmと46mmの2タイプを用意 |
断熱材の厚みに応じて、長さ26mmと46mmの2タイプ用意している。金属屋根、RC造どちらにも対応可能だが、不具合報告が多い金属屋根工法から適用する。現場での施工を経て、2016年3月の販売開始を予定している。
同社は、チューブワッシャーを活用し、防水シートの破断防止を追求した「新LCS工法」も導入予定だ。防水シートの固定部分にかかる風の影響をチューブワッシャーで軽減し、さらに建物内部からかかる圧力も抑制する。大西副本部長は「倉庫などの場合、外気圧よりも建物内の気圧が高い揚圧状態になることがあり、内圧でシートがふくれることで破断の要因になる」と分析する。新LCS工法はシートにかかる内圧の影響をなくすため、屋根とシートの間にある断熱材をテープで留める。建物内部から防水シート方向に抜けようとする風圧をテープによって防ぐことで内外ともにかかる力を最小限に抑える。
新LCS工法は既存の防水施工された屋根の上からの改修も可能だ。既存防水の劣化具合に合わせて、新しいシートを直接施工するか、下地を作った上で施工するかが選べる。「ニーズに合わせて提案していきたい」と大西副本部長。チューブワッシャー活用の場はさらに広がっていきそうだ。
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