ことし7月に世界遺産として登録が決まった23の「明治日本の産業革命遺産」の1つで、「軍艦島」としても有名な長崎県の端島=写真。毎年ここを訪れる観光客も2011年の9.6万人から14年度には19.2万人と増えており、世界遺産登録後は、さらなる増加が見込まれている。一方で外洋に位置する立地から、毎年台風発生のたびに護岸が破壊されたり、建設後約100年を経たRC造建築物の風化が進むなど、端島を守るための整備が欠かせない状況だ。
「毎回台風が上陸するたびに、多くの護岸やドルフィン桟橋などの見学施設が被害を受けている」(田中洋一長崎市総務局世界遺産推進室長)ため、被災後には災害復旧費などを計上して施設の復旧工事などを進めている。
端島には、1916年に建設されたRC造アパートである「30号棟」を始め、45年に完成した延べ約1万7000㎡規模の最大アパート「65号棟」など「世界最大のコンクリート暴露試験場」とも言われる施設群が残されている。
ただ、これらの施設保全は簡単ではない。「市の簡易的な試算では生産施設だけを対象とした最小で11億円、全施設を含むと最大で158億円が必要で、上陸のための施設は補助対象外となっている」(田中室長)という。文化財としての保護義務は、護岸や石炭生産のための施設が対象となっているため、住居施設については課題が山積したままだ。
田中室長は、「RC建築物は既に傷みがひどく、スラブがいつ抜け落ちるか分からない状態で、足場などもかけられない。この劣化進行を食い止める技術も現状ではない」と話す。
島の保有者である市としては、建築やコンクリートにかかわる学会や、国土交通省などが保有する保全技術などを活用してもらえないかと考えている。
また端島の整備では、安定的な整備費の確保と、迅速な対応が不可欠だ。市は現状で、ふるさと納税制度と、国内外からの個人・団体寄付で、25年度までの10年間で6億円の寄付を目標としており、「世界遺産についての取り組みを知っていただき、協力してくれる方を募っている」という。
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