「この指止まれでは、一向に進まない」。工場の集約化を推し進めてきた生コンクリート業界からは、こうした声が漏れ聞こえてくる。全国生コンクリート工業組合連合会と同協同組合連合会が業界の構造改革の一環として、2010年度から14年度までを期限に進めてきたが、目標数をクリアできず“不発”に終わった。写真は豊洲新市場工事現場。
業界を挙げて工場の集約化に踏み切ったのは、建設需要の縮小に伴う生コン出荷量の減少が背景にある。需要が減っても、全国に点在する工場数は平行線をたどり、結果として過度な販売競争が巻き起こる悪循環が生まれた。08年にはJIS規格違反の生コン出荷が社会問題化するなど、疲弊していた業界を健全な方向に戻す手だてとして、工場の集約化に舵(かじ)を切った。
目標に定めた集約数は1200工場。過去最大の生コン出荷量1億9800万m3を記録した1990年度は全国に4986工場が存在し、単純平均では1工場当たり約4万m3の出荷量があった。07年度には全国4000工場まで減ったが、出荷量は1億1200万m3まで減り、1工場の平均出荷は2万8000m3に激減していた。ピーク時の4万m3まで出荷量を増やすには総数を2800工場まで減らす必要があり、集約化の目標数を1200工場に掲げた。
業界を挙げて取り組んできたものの、この5年間の成果はわずか350工場にとどまった。集約化がスタートした10年度の出荷量は8500万m3となり、ピーク時の半減以下。必然的に工場集約に迫られたが、翌11年度以降からは出荷量が回復に向かい、生コン業者の多くが工場の集約にブレーキをかけた。出荷量は14年度に9400万m3まで回復、15年度は若干マイナスになる見通しだが、東京五輪を契機とした民間設備投資の回復や、リニア中央新幹線といった社会インフラ整備など需要増の期待感は強い。
3月末時点の工場数は3406工場(3081社)、14年度の平均出荷量は1工場当たり約2800m3となり、取り巻く状況は変わらない。5年間の集約化で課題も見えてきた。連合会によると、地区ごとに工場分布の濃淡があるため、集約化によって工事現場までの搬送距離が長くなり、輸送コストが上がったほか、空白地点ができてしまった協同組合もあった。工場同士で進めてきた共同販売事業が崩壊の危機に直面したケースもあった。
東京都江東区の豊洲新市場建設工事は東京都心部で供給される出荷量の15%を占め、この1年かけ周辺の工場が連携して生コンの安定供給を実現してきた。集約化の議論も同様だ。地域の工場が1つになって議論しなければ、より合理的な集約はできない。一定の需要が見込める間に、どこまで集約化を進めることができるか。「いまこそ、業界再構築のチャンス」と見る業界関係者も多い。
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