2015/11/12

【復興現場最前線】地域の特性を反映、被災者に寄り添った住宅づくり進む 南三陸町志津川東(第1)地区災害公営住宅建設工事


 震災による津波で被災した宮城県南三陸町。復興の槌音が鳴り響く同地で、飛島建設・志津川建設JVが災害公営住宅の建設を進めている。現場を指揮する遠藤準所長(飛島建設)は20棟を超えるマンション建設の実績があり、「経験を生かし、発注者である都市再生機構(UR)を始め、地元の南三陸町、宮城県の仕様を守りながら、入居者にとって使いやすく、不便の少ない建物を完成させたい」と力強く語る。写真は梁の地組み、柱の先組み、ボイドスラブ工法による合理化で進む躯体構築。

 UR発注の「南三陸志津川東(第1)地区災害公営住宅建設工事」は第1工区と第2工区の2棟の災害公営住宅を設計施工で建設する。ことし4月に着工し、順調に工事は進捗しているが、「インフラが未整備な状況下での着工だったため、当初は発電機で電源を確保し、給水は仮設タンクで対応した」と苦労を明かす。
 新規造成中の場所で建設を進めているため、搬入路などは別発注の造成工事との調整が不可欠となる。ただ、造成工事は飛島建設・大豊建設・三井共同建設コンサルタントJVがCM(コンストラクション・マネジメント)業務を担当しており、「連携よく作業を進めている」という。

◆入居者の目線で提案
 災害公営住宅は第1、第2工区ともにRC造4階建て。第1工区は3階床のスラブ配筋を行っている段階で10月末の進捗率は28.8%。一方、第2工区は3階建ち上がりの型枠作業中で10月末の進捗率は27.5%。躯体の構築に当たっては、通常であれば梁・スラブのコンクリート打設後、柱を組むが、スラブ筋と同時に柱筋を先組みするとともに、梁は地組みし、床にはハーフPCa(プレキャスト)板を使ったボイドスラブ工法を導入した。
 これにより、型枠工と鉄筋工の作業を固定した人数で集中的に行えるようになり、「躯体構築の1サイクルが通常よりも最大4日間短縮でき、作業員も少なくて済む」と胸を張る。
 地域の特性や声を反映した施工を進めており、「当初、廊下やバルコニーはモルタル金鏝(こて)仕上げだったが、海沿いで寒い地域のため、雨・風が強く、それが吹き込んで滑りやすくなる可能性もあるため、独自に設計段階からノンスリップシートを貼ることを提案した」
 現在も先行して引き渡された物件の不具合や使い勝手を情報収集し、入居者の目線に立った一部仕様の変更などを提案しながら施工しており、被災者に寄り添った住宅づくりを進めている。

◆仲間が優先的に従事
 当初は作業員の確保を懸念していたが、遠藤所長は宮城県出身で入社後7年間、東北で働いていたため、「当時現場で一緒に働いていた仲間(作業員)が優先的に来てくれた」。現在、両工区合わせて40-50人の作業員が現場に従事。今後内装などで最大150人に増え、宿泊所の確保がさらに厳しくなるが、「石巻市や登米市のビジネスホテルなどを確保し対応していく」考えだ。

遠藤準所長(飛島建設)

 「故郷の復興に貢献したい」との想いが実り、首都圏建築支店から転勤し、震災関連工事は、気仙沼市気仙沼終末処理場災害復旧建設工事ほか3カ所目となる。単身赴任だが、「東京に残した妻子から『充実感が顔色に表れている』と言われた」と笑顔を見せ、「スケジュールどおりに完成させ、1日でも早くという思いで住まいを待っている仮設住居の人たちに予定どおり入居してほしい」と口元を引き締める。

〈工事概要〉規模=RC造4階建て延べ2677㎡(第1工区)、RC造4階建て延べ2627㎡(第2工区)▽工事場所=南三陸町志津川字沼田41-1ほか▽発注者=UR宮城・福島震災復興支援本部▽監理=日東設計事務所(東京都新宿区)▽工期=2015年4月11日-16年6月20日(第1工区)、15年4月11日-16年5月30日(第2工区)
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