2016/08/01

【i-Con】対応型工事ぞくぞく発注で、現場はどう変わる<下> 本社から現場に展開する砂子組


 北海道の新千歳空港から約15㎞北に位置する「道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事」現場。砂子組(本社・奈井江町、砂子邦弘社長)が施工する北海道開発局発注のi-Construction(アイ・コンストラクション)対応型第1号の現場だ。写真は現場で勝也クスr3D-MCバックホウ

 ここでは、UAV(無人航空機)を利用した起工測量をはじめとし、3次元マシンコントロール(MC)を搭載した3D-MCブルドーザー「D37-PXi」を路体盛土工に、3D-MC油圧ショベル「PC200-i」を法面整形と橋台の掘削に活用している。
 工事開始にあたり 導入したUAVによるドローン測量では、タブレットに飛行ルートを入力し、現場周囲の写真を1000枚程度撮影し、写真測量で3次元点群データを取得、地形データを作成した。
 そのデータに設計3次元データを重ねて盛土量を算出し、さらに地形データ、UAV写真によるオルソ画像、3次元設計データを重ねて、現場上空を見下ろすモデルを作成し、施工計画の立案にも役立てている。
 現場を統括する野崎了所長は、国土交通省によるICT(情報通信技術)土工の第1号ということに対して「1番だからどうだという訳でなく、これまで培った技術を生かして、いつもどおり仕事を進めて行くだけだ」と淡々と語る。

野崎了所長

 言葉の背景には、砂子組が2009年度の北海道開発局発注工事から数十件の情報化施工を手がけてきた自信がある。
 これまでに、3次元レーザースキャナー(LS)と3D-CADを組み合わせて橋脚の既設構造物とのすり合わせ確認を行ったり、現場の交通規制や仮設計画にバーチャルリアリティー(VR)手法を取り入れるなど、数多くのICT技術を導入してきた。
 また、夕張シューパロダム熊の沢林道工事では、長さ約2㎞に渡って3D設計データを作成してマシンガイダンス(MG)を導入した実績もある。
 14年には、農業用水路工事の床掘に世界で初めてセミオートMCバックホウを導入、昨年度は杭打ち機を使ったペーパードレーン工法にMGシステムを導入して7000本の打設位置の位置出しにも活用している。
 11tクラスのキャリアダンプを小規模現場で活用したり、客土撒き出し位置をGNSS(全地球測位航法衛星システム)でガイダンスするシステムを開発するという取り組みも展開している。
 野崎所長は、この現場での情報化施工について「丁張りの設置の手間がなく、手元や測量など必要な人員も減っている。明らかに変わったと感じるのは、コストより、重機の近くに作業員がいないという安全への安心感だ」と話す。
 「今後は、3次元モデルを確認チェックできる職員の育成が必要になってくる。現場にいる人間が、3次元データまで扱えるようになると、より自由度が増すだろう。若手の入職についても、現場が3次元で簡単に捉えられるので、若い人たちも興味を持ちやすい」とも感じている。

現場に掲げられているi-Conの取り組み告知

 砂子組のi-Con対応で特筆すべきは、現場単位でそれぞれICTの勉強から進めるのではなく、メーカーなどとの打ち合わせを本社のICT担当者に一元化し、本社のICT推進室が現場に展開する方策だ。
 ICT推進室は、メーカーとの設計データ打ち合わせ、重機のインストレーション、操作説明までを担当し、動き始めると施工管理を含め現場が主体となって運用を行う。部分での最適を目指すのではなく、全体最適を求めた結果だ。
 またi-Con施策の中の「規格標準化」として進められているプレキャスト化についても、同社が現場で打設する構造物に適用していくという。
 同社の千葉大樹ICT推進室主査は、「今後、構造物の3次元モデルに、打設日やコンクリートの配合、スランプといった属性情報を持たせて、作成書類を簡素化することにも挑戦したい」と先を見据えている。

■「道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事
 工事延長480m、道路土工としては掘削工1400m3、路体盛土工5万3900m3の規模で、ほかにカルバート工が場所打ち函渠工約14m、排水構造物工がプレキャスト側溝約200m、橋台工が既製杭工20本、橋台躯体工1基など。工期は17年2月15日まで。
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