2016/10/03

【オーサカ建築4】わい雑・混沌・近代・現代が溶け込む大阪の風景 日本建築協会会長・香西喜八郎氏


 大会で大阪に来られるのであれば、個別の建築だけでなく、ぜひ建築を含む大阪独自の歴史的コンテキストの中で風景を体感してほしい。写真は淀川北岸から望む高層ビル群

 新大阪駅から地下鉄やタクシーなどで新御堂筋を南下すると、淀川北岸から梅田スカイビルやホテル阪急インターナショナルなどといった都心の高層ビル群が一望できる。頭部のデザインが一様でなく起伏に富んでおり、混沌(こんとん)としながらなじみやすい、面白い光景だ。高層ビル群自体は珍しいものではないが、大きな河川の向こうに突如として広がる摩天楼は国内ではなかなかお目にかかれるものではなく、さながら砂漠から望むラスベガスのネオンのようだ。
 梅田から銀杏並木の御堂筋を南下すると、中之島とクロスして歴史的建築物と最先端の高層ビルが混在する船場地区。適塾や小西家住宅などの江戸-明治期の町屋建築を始め、芝川ビル、綿業会館といった近代建築、高度成長期に建った高速道路が屋上を走る船場センタービル、現代的なオフィスビル、最近ではタワーマンションの開発なども進んでおり、やはり混沌としながら人や建築がまちに馴染んでいて、独特の空気感を醸し出している。
 少し南下すると南船場。西側へ少し入ったところには、赤い壁一面に植木鉢を配置した壁面緑化の原点ともいえるオーガニックビル(*)がある。オフィスビルや商店が立ち並ぶ中にあって異彩を放つ光景は高尚でありながらどこかわい雑で、世俗的・民族的な大阪の文化を体現している。

日本建築協会会長 香西喜八郎氏

 さらに南下し、道頓堀川に架かる道頓堀橋に差し掛かれば東側を向いていただきたい。グリコの看板が有名な風景だが、ここも近代と現代が共存し、にぎわい豊かな繁華街に自然に溶け込んでいる。わい雑、混沌とした大阪を代表するスポットだ。
 難波から天王寺へ地下鉄で南下。駅上のあべのハルカス(阿倍野区阿倍野筋1)から天王寺公園を経由で大阪市立美術館(天王寺区茶臼山町1-82)へ。眼下に新世界や通天閣を見下ろし、大阪の風土が体感できる。
 都心を縦断するだけでこれほどめまぐるしく雰囲気が変わるまちも珍しい。文化と生活が文字どおり混在している大阪の魅力を、ぜひこの機会に感じてほしい。 (おわり)

 *オーガニックビル(中央区南船場4-7-21)=1993年完成。設計はUDコンサルタンツ。内部設計は伊デザイナーのガエタノ・ペッシェ。規模はSRC造地下1階地上9階建て延べ7053㎡。

◆日本建築家協会(JIA)建築家大会2016大阪
 大阪市中央公会堂をメーン会場に10月27-29日にかけて開催。連続シンポジウムや見学会、セミナー、建築CAFEなどを通じて「笑い」が支えてきた商都大阪の受け継がれてきた文化の歴史物語に改めて目を向け、「繋がる」「繋いでいく」ことの大切さを再認識し、これからのまちのありようを考える。問い合わせはJIA近畿支部(電話・06-6229-3371)。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿