2017/02/01

【シンポ】石巻発展の礎を築いた川村孫兵衛の功績から復興まちづくり探る 土木学会東北ら


 土木学会東北支部(川瀧弘之支部長)などは1月28日、宮城県石巻市の石巻専修大学で、北上川の改修から400年を記念して「川村孫兵衛シンポジウム」を開いた。会場には市民ら約300人が詰めかけ、石巻発展の礎を築いた川村の功績を振り返るとともに、東日本大震災からの復興まちづくりのあり方を探った。東北地域づくり協会や東北測量設計協会などが後援した。

 冒頭、あいさつに立った亀山紘石巻市長は「河川や港湾は当市の産業を支えており、川村が発展の基礎をつくった。今後も川村の偉業を伝えていくとともに、北上川を生かしたまちづくりを進めていきたい」と語った。
 川瀧支部長は「震災から間もなく6年を迎えようとしている中、石巻市内では北上川の復旧やまちづくりが進んでおり、今後は復興祈念公園もつくられる。これらの整備に当たっては、昔の人々の知恵を学びながら進めていくことが大切だ」と述べた。

講演する後藤光亀東北大大学院工学研究科准教授

 この後、後藤光亀東北大大学院工学研究科准教授が「北上川改修と川村孫兵衛-地形と地名に学ぶ先人の土地利用とこれからの防災意識」と題して基調講演した。この中で後藤氏は「川村孫兵衛は数学や天文学、測量学、水理学などに優れ、土木工事を計画・施工する科学力と技術力を備えていた」と川村の人物像を紹介。その上で「石巻には河川はんらんで自然堤防が形成された場所を示す埣(そね)という地名が全国で最も多い。われわれは、さまざまな経験・知識を持っていたのに震災で多くの命を失ってしまった。地形や地名などを学び、自分たちの判断で災害から逃げる方向が決められる若者を育てていく必要がある」と強調した。
 続いて、後藤氏と石巻千石船の会の邊見清二会長、庄子真岐石巻専修大准教授、浅野亨石巻商工会議所会頭、高橋政則東北地方整備局北上川下流河川事務所長、古関良行河北新報社石巻総局長の6人が「石巻のまちづくりにおける孫兵衛の功績、そして未来へ」をテーマにパネル討論した。
 パネリストからは「無堤防地区だった市街地に堤防が整備されるのにあわせて魅力ある親水空間をつくるべきだ。6.5haある中瀬は、夢と魅力がある土地利用を考えてほしい」「観光客は地元の人たちでにぎわっている場所に興味を示す。小さくても住民が楽しめる場をつくることが重要だ」「中瀬に釣り場をつくるほか、自分の記念日に花火を打ち上げるイベントを毎週実施すれば人が集まる」といった意見が出された。
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